今日のテーマは、『日本人が、元本保証という幻想から解き放たれる時《後編》』です。
昨日の公式ブログでは、
『日本人が、元本保証という幻想から解き放たれる時《前編》』と題して、
過度な『元本保証信仰』がもたらす事の『弊害』についてご紹介しました。
少しだけ振り返ると、
『資産形成(投資)』に対して、元々、『苦手意識』が強くあるのが、
古来より『島国』『農耕民族』という特性を持ってきた『日本人』です。
『それが故』と言えるかも知れませんが、
昨今のように、『資産形成(投資)』が必要不可欠な時代になると、
『元本保証』というミラクル・ワードを盲信し、『思考停止』してしまいます。
悲しい哉、
『お金を失いたく無い』という想いが強過ぎるが故に、
皮肉にも、『元本保証』という言葉に過度に依存して、
『投資スキーム』等、ロジックには目がいかなくなるのです。
その結果、
『金融詐欺』が世界一横行していると言われるのが『日本国』であり、
その内訳も、突出して多いのが『元本保証詐欺』となっているという事です。
あらゆる物事でそうですが、
1つの対象に対して、過度に『信仰心』を持ち過ぎたり、
自らの中で、『神格化』し過ぎたりするのは『危険』を伴います。
最たる事例が、
偏った思考法の『宗教』などがイメージ出来ると思いますが、
個人的には、『元本保証教』も、なかなか強烈な求心性があると考えています。
そもそも、
『資産形成(投資)』に明るい方々なら分かると思いますが、
『投資リターン』というものは、『リスク(不確実性)』の対価として支払われます。
もし仮に、
『1年後』に、投資元本の『2倍』になる対象があったとして、
それが『確実』なのであれば、世界中の資金がその対象に集中してしまいます。
上記事例で、
投資元本の『2倍』のリターン(見込み)を提示するのは、
そのリターンに相応の『リスク(不確実性)』が存在しているからです。
先ずは、その事を理解しておかないといけません。
また、
『元本保証』というミラクル・ワードについて、
世間一般の方々が、もう1つ、明確に理解しておかないといけない事もあります。
それは、
『元本保証』というルールを謳う以上、その投資対象は、
『債券』をベースとしたスキームでしか、その目標実現が出来ないという事です。
勿論、
一口に『債券』と言っても、ロジックや信用格付け等も千差万別の為、
一概に、『債券=元本保証』という等式は成立する訳ではありません。
いくら『信用格付け』が高い債券でも、
『償還リスク』が全くゼロというものは、世の中に存在しないからです。
しかし、
そんな屁理屈を捏ねても、話は何も進展しないので、
ここでは、『高格付け債券』を組み込むことが不可欠であるご理解下さい。
典型的事例は、
将来の『償還額面』に対して、ディスカウントされる『割引債』を購入し、
その差額部分で『リスク』を取り、投資運用していくというスキームです。
そうする事で、
『差額部分』の投資で、仮に失敗して資金を失ったとしても、
『償還金額』は確定しているので、『元本保証』は実現出来るというロジックです。
ただ、
当然の話、将来の『償還リスク』が低い債券というものは、
『リスク(不確実性)』というものも殆ど存在しないので、
必然、『投資リターン』も大きくない値になります。
よって、
『元本保証』を謳いながら『高利回り』を提示してくる対象は、
そもそも『詐欺』か、『元本保証』の部分が虚偽記載という事になります。
前述、
『虚偽記載』という言葉を使わせて頂きましたが、
明確にそうではないとしても、消費者にそう感じさせる広告は巷に溢れています。
例えば、先日、このようなものを見つけました。
投資家から『1口:100万円』で出資を募る不動産投資案件で、
想定利回り『年間6〜7%』、『(不動産)元本評価割れ無し』を謳う広告です。
いくつか事例が示されていましたが、
出資者には『隔月(2月に1回)』で分配金なるものが配当され、
その年間総額が、前述の『(対出資金)年間6〜7%』にも上るのだとか。
運用期間は、
対象ごとに『3年〜5年超』と幅があるようですが、
物件売却時に、『出資元本』が返却されるという仕組みのようです。
前半でご紹介した通り、
もしこれが、本当に『元本保証』の投資対象であれば、
そのそも、『隔月配当』のスキームの時点で、破綻している事が分かります。
また、
物件売却時には『出資元本』が償還されるシュミレーションがされていますが、
注釈には、小さい文字で『不動産評価額80%以上で運用された場合』と記載があります。
つまり、
一見、『元本保証』で『安定利回り』が確保できるように見えるこの対象も、
提供会社記載の通り、『元本を保証するものでは無い』ということなのです。
ここからは個人的見解ですが、
現在、『バブル』を極める日本国内:不動産市場において、
今後、数年間の内に、その『崩壊』が始まる可能性は高く、
『不動産評価額80%以上での運用』は並大抵の事では達成できません。
そうすると、
虎の子の『年金資金』を拠出して、市場参入をした方々も、
大半の方々が、想定外の『泣き』を見る事になると思います。
『元本保証』という事に固執し、盲目的にならないようにしましょう。
その『スコトーマ(盲点)』を手放す事で、視界もクリアになると考えます。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太