今日のテーマは、『自分だけは大丈夫と考える癖のある人ほど、金融トラブルに巻き込まれる』です。
今年に入り、ネット証券を中心として口座の乗っ取り、該当口座を通じて株式・ファンドが不正売買される事案が相次いでメディアを賑わせています。
現時点、楽天・SBI・野村・マネックス・SMBC日興・松井証券等で不正取引が確認されており、各社の口座保有者を合計すると個人投資家全体の7ー8割をカバーするほど大きな規模に拡大。
フィッシング対策協議会の公表によると、フィッシング詐欺メールや偽サイトに関する報告事案は、今年3月から1ヶ月ほどの僅かな期間で確認されただけでも約1万8千件にのぼるのだとか。
証券会社によっては、海外株式(中国・米国)を中心に一部取引制限という対応を迫られる会社もあり、投資家の重要な権利(売買権)が奪われるという異例の事態へと突入している。
それでも、当該取引(株式・ファンドの売買)が本人によるものかは証券会社サイドから判断出来ないことも多く、不正取引に対する補償等は原則行われないため致し方ないとは思いますが。
社会全体として多くの方々が被害に遭われるため、一概には言えませんが、口座を乗っ取られた人たちの共通点として『まさか自分が、、、、』という言葉が出るのをよく聞きます。
この言葉(まさか自分が)が出る背景には、当事者意識の欠如もあるかもしれませんが、それ以上にオーバーコンフィデンス(自信過剰)バイアスが働いていると感じています。
『自分(だけ)は大丈夫』と考える人間は、その瞬間に大きな盲点が生まれて、危機意識が欠如してしまい、簡単に『騙されやすい環境』を自ら整えてしまうことになる。
有名な話では、社会的ステータスが高い人たちや、いわゆる『先生』と呼ばれる職業にある人たちほど、お金のトラブルに巻き込まれやすいことが確認されています。
もちろん、前述した方々が優秀な傾向にあることは事実ですが、その反面で高すぎるプライドが障害となり、その点を突かれてネガティブに利用されてしまうのです。
分かり易い事例で言えば、前述の人たちは『ご存知(お分かり)かと思いますが』というフレーズで話を始められると、仮に未知の領域でも、正直に『知らない』とは言えなくなる。
一度同調してしまうと最後で、最初の取り繕いと整合性が取れなくなるため最後まで『NO』が言えなくなり、最終的に間違った方向へとアクションすることになるのです。
すべての物事に共通して『自信』を適度に持つことは大切ですが、投資・金融の分野だけに関わらず、それが度を越してしまうと大きなリスク因子となってしまいます。
また、事業家の視点から言えば、オーバーコンフィデンス(自信過剰)に陥ってしまった時点で、すでに事業全体の凋落がスタートしてしまうということも感じています。
常に、客観的な視点から俯瞰することを習慣化して、日々、自らに健全な意味での『疑いの目』を向ける姿勢が重要だと考えます。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太