今日のテーマは、『パナソニックHD1万人の人員削減に見る、これからの時代のリストラの現実』です。
先週末9日、パナソニック・ホールディングスから突如として、早期退職の募集等を通じて1万人規模に及ぶ人員削減(リストラ)を実施することが公表されました。
さすがは天下の松下電器産業。退職する従業員だけで、もうひとつ大企業が作れてしまう人数です。
同社は過去、2000年代初頭のITバブル崩壊に伴う約1.3万人、2011年の三洋電機の子会社化に伴う3万人超のリストラを実行しており、今回はそれらに匹敵する規模になります。
1万人の内訳は国内・海外とも半々で、それぞれ約5千人がターゲティングされるとのこと。
大部分の人員整理は今年度末(2026年3月末)に実行されるものとし、猶予期間として設定された来年度末までに会社が予定するすべてのプロセスが完了すると言います。
恐らく、内々に対象者の選定は進んでいて、該当者は自らも認識しているでしょうから、これから暫くは気が気でない日々を過ごすことになるでしょう。
先ほどは『1万人』を大きな数字として紹介しましたが、グループの従業員数が23万人に迫るグローバル(超)巨大企業において、リストラの該当者は全体の4%程度。
この期に及んで、従業員の大多数は『他人事』に感じているのかも知れません。
パレートの法則(20:80の法則)に照らせば、パナソニックという企業にとって支払う給与以上の利益をもたらす従業員数は、楽観的に見積もっても全体の上位20%・4万人ほど。
裏を返せば、全体80%に該当する18万人を超える従業員は『不要な人材』ということになり、ステークホルダーの最上位にいる株主から見れば、まだまだ改善の余地はありそうです。
今回の人員整理の理由としては、表向きは『経営不振』とされていますが、これは真実を表しているでしょうか。
確かに、同じく業界首位グループに属するソニー・グループと比して収益力(利益率)は見劣りしますが、前年比マイナスとは言え、同社は今期も約8兆円の売上と3000億円を超える純利益を見込む。
一昔前の『リストラ』という言葉からイメージされる業績悪化とは乖離しており、ゾンビ企業が如く、毎年赤字を垂れ流しながら瀕死の経営を続けているわけでは決してありません。
それでは、なぜ大規模なリストラを実施するのでしょうか。
それは、何かひとつ明確な理由で説明できる訳ではなく、様々な要因が複雑に絡まり合って表出していると感じます。
例えば、社会全体としてリストラ(人員整理)・終身雇用の崩壊が一般化し、企業サイドも従業員サイドもそれが選択肢の一つという共通認識が出来上がってしまっていること。
また、企業活動がグローバル化したことで競争力強化がこれまで以上に必要になったことや、株主を意識した経営が常識化されたことで、収益力の最大化が最優先されるようになったこと等も一因です。
パナソニックに話を戻すと、今回は運良く(?)難を逃れることができる約22万人の従業員の方々も、今後を見据えれば決して『対岸の火事』ではありません。
確率論として、パナソニックほどの巨大企業が倒産する可能性は高くないと考えますが、それは、そこに所属する従業員の方々の雇用を保証するという話とは繋がらない。
良くも悪くも、流動性が年々増していく労働市場において、被雇用者(会社員)という立場であっても今まで以上に『価値を創出する』という感覚が求められることになります。
果たして、あなたは定年まで生き残れるでしょうか?
一度、時間を作って振り返られることをお勧めします。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太