今日のテーマは、『世界最低水準にある日本の政策金利は、なぜ容易に引き上げられないのか』です。
予定では昨日(29日)が仕事納めでしたが、イレギュラーな対応が入ったため1日延長。
12年目に突入してた公式ブログも、2025年は今日の記事が最終リリースになります。
年の瀬迫る29日、日銀は今月18日−19日に開催された金融政策決定会合の主な意見(議事録)を公開しました。
同会合では、30年ぶりの水準となる政策金利0.75%への引き上げが決定されましたが、それでも尚、政策委員を務める9人からは『群を抜いて世界最低水準にある』ことが指摘されています。
確かに、日本の政策金利はゼロ金利の呪縛から解かれて名目0.75%まで上昇してきましたが、約3%とされる消費者物価の伸びを考慮すると、未だに実質金利はマイナス2%超の水準に低迷しています。
海外諸国は相反して『利下げ』に方針転換していますが、にも関わらず、米国3.50ー3.75%、英国3.75%、欧州2.15%、豪3.6%、カナダ2.25%と、軒並みプラス圏から実質ゼロ付近を維持しています。
日本以外では最低水準にある欧州(EU)と比較しても1.4%の金利差があり、確かに、日本の政策金利の低さは世界的に見ても際立っていますね。
今年10月に発足した高市政権も現時点では利上げに対して容認姿勢を見せており、日銀内部・政策委員からは来年(2026年)以降も利上げは継続していくべきだという意見が優勢です。
以前の記事では、政策金利は各国の経済情勢を踏まえて独自決定しても良いと記載しましたが、それでも(辛うじて?)主要先進国の一つとしてある程度の足並みを揃えた方が良いことも事実です。
それでは、景気を熱しも冷ましもしない中立的な金利水準まで(少なく見積もっても)1%以上の乖離がありながら、なぜ、日本は政策金利の利上げを決断・実行できないのでしょうか。
それは、天文学的なレベルの債務を積み上げてしまった財政問題に起因しています。
目下、来年度の一般会計予算の審議が進められていますが、歳出総額122兆円超のうち、債務の償還・利払いに充当する国債費は約30兆円が見込まれています。
このうち、金利が現行水準に留まると仮定した場合の利払いは11兆円規模になると想定していますが、もしも金利が上昇した場合、この数字も数兆円単位で影響を受けてくることになります。
もちろん、資本主義経済下で『ゼロ金利』は異常事態であり、金融・経済の原則に照らし合わせれば、日本の金利はより高い水準に高められるべきです。
しかし、これまで積み上げてきた莫大な国家債務が足枷となり、容易に引き上げることができず身動きが取れなくなってしまっている。
この問題はそう簡単に根本解決するはずもなく、来年以降も日本を待ち受ける未来は多難です。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太





