今日のテーマは、『20年ぶりに火垂るの墓を見て気付いたこと』です。
先日、『火垂るの墓』が金曜ロードショーで放映されましたね。
高畑勲監督の追悼記念として、約6年ぶりにテレビ放映されたようです。
私は、リアルタイムで視聴はできませんでしたが、
録画したものをやっと先日観ることが出来ました。
最初に劇場で放映されたのは、確か30年近く前の話ですよね。
私がまだ小学生になる以前、地元のレンタルショップで、
当時まだVHS版だった『火垂るの墓』を借りた記憶があります。
*正確には、私が借りたかった訳ではなく、親戚の兄さんが借りた。
小学生の時期は頻繁にテレビ放映されていた記憶がありますが、
中学・高校では野球に没頭し、大学・社会人になってからも見ていなかったので、
本当に、約20年ぶりにこの映画を見たのだと思います。
改めて見てみて、
30年近く昔に作成された映画とは思えぬほど、
全ての面において『クオリティ』の高さを再確認しました。
今見ても、決して『古臭さ』を感じることなく、
未だに『鮮度』を保っていたように感じています。
また、
幼い時の記憶とは凄まじいもので、繰り返し見ていた事により、
登場人物の細かなセリフ等も、しっかりと覚えている自分がいました。
スタジオジブリの作品は結構好きですが、
『火垂るの墓』も(好きかどうかは別にして)記憶に強烈に残っていた作品の1つですね。
高畑勲監督自身、実際の空襲体験を、
私の地元・岡山大空襲で経験されていることも、何か不思議な縁を感じます。
それで、
当たり前の話ですが、20年ぶりに作品を見ると、
当時の自分では拾うことが出来なかった描写や、時代背景も見えてきますね。
多くの方がストーリーはご存知だと思いますし、
長くなると思うので、ここでは映画のあらすじの説明は割愛させて頂きます。
今回、この映画を観た時、私が最も強く印象に残ったのは、
戦後の動乱期でさえ、『貧しい者』と『富める者』が存在していたこと。
映画は冒頭、主人公である14歳の青年・清太(せいた)が、
(おそらく三ノ宮か西宮)駅でなくなるシーンから始まります。
『昭和20年9月21日、僕は死んだ。』の有名なフレーズは、
映画が始まった瞬間から、幼少期の私にも『強烈なインパクト』を残しました。
栄養失調で、骨と皮だけになってガリガリに痩せ細り、
今にも死にそうな状況で、虚ろな目をして座っているボロボロの清太。
『うわ、びっくりした!きったないやっちゃなぁ!』
『もうじき米軍が来るっちゅうのに、あんなん駅におったら日本の恥やで。』
そう言いながら、これまでと変わらず日常を過ごしている人々と。
目の前に貧困で死にそうな人間がいる一方で、
食べるものも、着るものもあり、これまでと変わらぬ日常を送れる人間が存在している。
駅には、背景に清太以外の栄養失調者も描かれている事から、
当時、この『両極端な背景』を持つ人々が、
同じ世界に、同時に、日常的に存在していた事がわかります。
それは決して『特別』なことでも何でもなく、
当時の人々からしてみれば、『自然で』『日常的な』事でした。
確かに、
主人公の清太と節子は、大戦によって両親を亡くした『戦争孤児』なので、
(*父親に関しては、正確な描写がないので推測の域。)
彼ら自身に、貧困の『責任』をそのまま問うことは出来ません。
しかし、
大人になって初めて観た『火垂るの墓』で、最も強烈な印象を残したのは、
国家有事の際に、生命を分かつほどの『社会格差』が、そこに存在していたことです。
これは、
現代の日本で問題となっている、経済レベルの『格差』以上のものです。
起因するのは『経済問題』ということは同じですが、
現代の日本で数十万人・数百万人レベルの餓死者が出ることは考えにくく、
それと比較すると、いかに戦後の『経済格差』が壊滅的なものだったかわかります。
また、
映画の後半、妹・節子がなくなる前後のシーンでは、
戦争が終わって自由が訪れ、久しぶりに実家に帰省する優雅な家族の描写が現れます。
そして、
その家から眺める綺麗な池(湖ではないと思う)の対岸には、
清太と節子が身を寄せ合って生活していた、防空壕の残骸を望むことが出来る。
節子が亡くなり、生きていた時期を回想するシーンが流される事により、
残酷なまでの両者の対比が、何とも言えない感情を心に抱かせます。
第二次世界大戦直後。
これほど大きなインパクトはないであろう時期でさえも、
同じ時、同じ場所、同じ国民の間において、壊滅的な『格差』は存在するのです。
21世紀に入り、もう、あの頃のような『世界大戦』は起きないかも知れない。
ただし、
次に訪れる『国家有事』は、これとは違った形なのかも知れません。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太