今日のテーマは、『2026年度の税制改正により暗号資産(仮想通貨)は新たな時代に突入する』です。
約2ヶ月前の公式ブログでは『規制を強めるほど望む結果から遠ざかり、緩めるほど近付くというジレンマ』と題して、暗号資産(仮想通貨)に関する一つの潮流変化が起こる可能性を示唆していました。
それは、楽天グループ会長・三木谷浩史氏が代表理事を務める経済団体・新経済連盟から、来年度(2026年度)の税制改正に対する提言が公表されたというもの。
少しだけ補足すると、新経済連盟とは、デジタル化やIT技術革新を軸として産業構造・制度・制作の変革を促し、日本経済の競争力ひいては国民生活の向上を目指すことを目的とする団体のことです。
その基本理念は『税率を引き下げて日本経済を活性化し、税収を増やして再び国内投資へ向かわせること』としており、今年9月の提言では税と成長の好循環を実現すべく3つの柱が示されていました。
その中で、主なターゲットとするものの一つに暗号資産(仮想通貨)があり、現行の総合課税(最大税率55%)の対象から、株式等と同様の分離課税(一律20%)に変更するよう求められています。
以前の記事でも触れていますが、個人的にはその実現に対しては賛成です。
確かに、現行ルールの総合課税では利益に対して大きく課税することが出来ますが、その税率の高さが足枷となり、多額の含み益を抱えたまま塩漬け(?)にしてしまう人たちがいることも事実です。
また、税負担を少しでも軽減することを目的として、数年がかりで準備を進めたのち、国外に転出してしまった人たちも若干名ですが身近に知っています。
もしも、一律20%の申告分離課税が実現すれば、そういった人たち(国外転出)が激減することはもちろん、多額の含み益を抱えた保有者たちも大きく換金(売却)に動くことが想像されます。
そうなれば、日本政府が期待する投資マーケット全体の更なる活性化が起こる可能性も高まり、再び5万円台を回復した日経平均株価も、もう一段の上昇圧力が働くことになりますね。
ただ、総合課税(最大55%)から分離課税(一律20%)への転換には政府内で反発があることも必至で、仮に実現するとしても、それには相応の時間(10年程度)を要すると想像していました。
しかし、私の予測は良い意味で裏切られ、新経済連盟が提言した通り、暗号資産(仮想通貨)をめぐる課税ルールの変更は来年度の税制改正案に盛り込まれることになりました。
実現すれば、間違いなく暗号資産市場にとってエポック・メイキングな出来事となり、マーケットには2つの相反する圧力が働くことになるだろうと想像しています。
その一つは、前述した通り、これまで多額の含み益を抱えながらも、課税される税率の高さに躊躇していた人たちが大きく『売り』に動くというもの。
ご存知の通り、現時点で本質的価値はなく、主には需給バランスにより価格決定される暗号資産(仮想通貨)において、これは下落圧力として働くことになります。
しかし、時を同じくして『買い』に入ろうとする人たちの存在も一定数期待できるため、両者が生み出す圧力が拮抗する形で価格形成されていくことになるというのが私見です。
これまでは、その対象そのものが注目を集めていましたが、今回は一種のゲーム・チェンジ(ルール変更)により市場が大きく動くことになる。
間違いなく新たな時代に突入することになる暗号資産市場を、対岸からですが興味深く見守っています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太






