今日のテーマは、『昨年7月に実施された紙幣刷新なるイベントは、果たして何だったのか』です。
昨年(2024年)7月に新しくデザインされた紙幣の流通がスタートして、早いもので1年以上が経過しました。
遡ること6年前、大きく前倒ししてアナウンスしていたことも奏功してか、現時点まで大きな混乱はなく、街中の自販機・自動精算機等でも速やかに新券対応が進んでいると感じています。
一説によると、今回のイベント(紙幣刷新)に対応するためのコストは少なく見積もって1.6兆円、諸々の周辺コストまで含めると2兆円近くに達することになり、これは鳥取県(人口53万人)のGDPに匹敵します。
実行に至る表向きの理由は『偽造防止』とされていますが、キャッシュレス決済が浸透しつつある現代社会で、数年に一度、ニュースで聞くか聞かないかレベルの偽札使用の対策にそれだけの巨費を投じるのは馬鹿げている。
*そもそも、現時点では旧デザインの紙幣も新券同様に利用できる訳で、偽造防止を理由とする理論は破綻しています。
それでは、それだけの大イベントを実施する『真意』はどこにあったのでしょうか。
私見では、先日公表された日銀による調査結果に一端が垣間見えると考えています。
それによると、銀行をはじめとした金融機関に預け入れられていない『タンス預金』が、現時点で日本国内に『60兆円規模』で存在すると見積もられているとのこと。
これは、刷新のイベントが実施される前に推計されていた『100兆円超』という数字と比較すると、ざっくり見積もって半減してしまったことになりますよね。
つまり、これまでは想像の域を出なかった隠れた存在のお金が、昨年7月を起点として、わずか1年間で50兆円から60兆円規模も市場に流出したことを意味しています。
その一部は新券に切り替えられて(?)銀行預金に回ったかも知れないし、直近の上昇相場を受けて、株式市場を中心とした投資マネーとして活用されたのかも知れません。
いずれにせよ、隠れた存在のものが『表』に出てきたことに変わりなく、日本政府サイドから見れば捕捉可能となり、しかるべき時(相続・贈与等)が訪れたら堂々と課税することが可能となりました。
現行制度において、相続税の税率は10%から最大55%と規定されていますが、平均税率を20%と堅めに想定したとき、表出した60兆円からは『約12兆円』の相続税を徴収することが出来ます。
また、今後を見据えれば(タンス預金の)残りの『60兆円』を炙り出す効果も期待することができ、前述した際は巨額に思えた刷新コスト(約2兆円)も十分に回収することが可能ですね。
さらに、今後、旧紙幣(福沢諭吉・樋口一葉・野口英世)に使用の有効期限を定めるようなことがあれば、原則、ほぼ100%の国民資産を政府の認識下(監視下?)に置くことも可能になるのです。
世の中で実行されるイベント(事象)はすべて、経済的合理性を無視しては起こり得ません。
国家が主導する形で実施される、まして巨費を投じるともなれば、それは尚更だと考えます。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太