今日のテーマは、『資産形成の第一原則を遵守するには、金融業界の常識を知る必要がある』です。
和を以て尊しとなす精神が根底にある日本人(大和民族)は、元来『お人好し』の国民性だと言われています。
もちろん、それがポジティブに作用する場面も多々あると考えますが、こと資産形成(金融分野)に関して言えば、その気質がネガティブに利用されてしまうことが多いのも事実です。
特に、その性質(お人好し)は地方に行くほど強まる傾向にあり、魑魅魍魎が跋扈する金融の世界において、悪の枢軸(銀行・保険・証券等)から喰いものにされる人が相当数いると想像します。
先日、興味を惹かれるとともに、強く憤りを感じさせられるニュースリリースを目にしました。
それは、メディアCMでもお馴染みのマネードクターを展開する保険代理店・FPパートナーズと、中古車販売兼・損保代理店大手ネクステージの2社に金融庁から業務改善命令が出されたというものです。
罪状は双方とも同様で、顧客の意向に沿って最適な保険商品を提案するかのように装いながら、保険会社からの便宜供与の見返りとして、その額の多い会社の保険を優先的に推奨していたというもの。
より分かり易く言えば、両代理店とも広告費等の名目で保険会社から金銭供与を受けており、ランキング上位の会社から順に顧客に提案する保険商品が(予め)決定されていたということです。
表向きは、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店は、顧客の意向やリスク耐性などを十分に考慮して最適な商品を提案する『比較推奨』というスタンスが求められているのだと言います。
しかし、今回の事例では基本原則と完全に逆行した営業活動が現場で行われており、金融庁は『(顧客サイドの)適切な選択機会が阻害されている』と判断して前述の措置(業務報告命令)に至っています。
冒頭の話に戻ると、報道を目にして私が強い憤りを感じたのは、意外に思うかも知れませんが、両者(FPパートナー、ネクステージ)が金銭供与の見返りで推奨商品を選択していた事実に対してではありません。
何故なら、そのような裏(乗合代理店が保険会社から金銭供与を受ける慣例)があることは周知の事実で、金融業界においては『常識』というレベルのことだから。
私の憤りのポイントは、このような報道が出ること自体、世間一般大多数の人たちが乗合代理店(*)で自らに最適な保険商品が提案されていると信じている証拠だと感じたことです。
*FPパートナー・ネクステージの名誉のため(?)に補足すると、このような顧客を欺く営業行為は2社に限定されたものではありません。保険◯場、ほけんの◉口等も同様で、業界全体で日常的に行われており、今回は運わるく(?)前述の2社が金融庁から指摘を受けただけなのです。
少しだけ冷静に考えてみてください。
顧客からアクセスし易いよう、乗合代理店は大手ほど各都市の一等地に実店舗を置いており、宣伝広告費・人件費・消耗品費・販促品費等も含めて莫大なコストをかけて運営されています。
もちろん、彼ら・彼女らもボランティアで活動している訳ではなく(実際はその真逆で)契約に際しての保険会社からのバック・マージンも含めて、手数料を最重要項目として念頭において営業が行われています。
表面上はどれだけ親切丁寧・フレンドリーに接して来ようとも、彼ら・彼女らが常に考えているのは、目の前の顧客から『最も手数料収入を得られる方法・商品選択は何か』ということ。
その営業スタンスが悪いとは言いませんが、顧客サイドも彼ら・彼女らを盲目的に信じることなく、適切に疑う視点を持つことは(経済的観点で)自らの身を守るため最低限必要なことだと考えます。
投資の神様ウォーレン・バフェットは、資産形成(投資)を成功に導く二大原則を次のように表現します。
第一原則は、決して『お金』を失わないこと。
そして、第二原則は第一原則(お金を失わない)を忘れず、遵守すること。
これらの原則(鉄則)を守るためにも、金融界の『常識』を知ることは欠かすことが出来ません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太