今日のテーマは『AI時代の変遷期、ブルーとホワイトの地位逆転は一過性の現象で終わるのか』です。
先週の公式ブログでは、『AIバブルがいつか崩壊するように、近い将来AIリストラの波も必ず訪れる』と題して、今後、専門性のない代替可能な仕事の淘汰が加速することについて触れました。
その中では、エッセンシャル・ワーカー(生活必須職従事者)を例に挙げて話を展開しましたが、淘汰される職業は、従来の定義で言うところのブルーカラー・ホワイトカラーの分類に囚われません。
つまり、ブルーカラー(肉体労働者)であっても専門性のある職業に就く人は報酬的にも恵まれて生き残り、ホワイトカラー(頭脳労働者)であっても代替可能な人材は否応なく退場を命じられる。
実際、米国では既に『ブルーカラー・ビリオネア』なる言葉が生まれていると言われ、肉体労働者であっても、頭脳労働者と同等かそれを上回る収入を得る逆転現象が起きていると聞きます。
もちろん、現実的にはビリオネア(10億米ドル長者:約1500億円)になることは不可能ですが、そのような形容が生まれること自体、とても夢のある話に感じられますよね。
巷では『今や、配管工は医者よりも高い収入を得る』とのジョークもあるようで、それは極論だとしても、これまで高所得者の代名詞だった士業と同等に近い収入を得られるというのは事実のようです。
反対に、これまではホワイトカラー(頭脳労働者)に分類されて、収入的に恵まれてきた業種の中には、AI時代の変遷期に突入して、急きょ劣勢に立たされているものが幾つか存在しています。
例えば、以前の記事中でも触れたコンピューター・サイエンス専攻はその代表格で、彼ら・彼女らのメインの仕事だったコンピューター・コードの作成はAIの台頭により消滅の危機に瀕しています。
私立が主流の米国では、一般的な四年制大学を卒業するにも最低10万米ドル(約1500万円)が必要と言われますが、果たしてその学費を支払う価値があるのか非常に疑わしくなってきました。
対して、従来はブルーカラー(肉体労働者)に分類されていた方々でも、いわゆる職人として手に職をつけた人たちは、時代の潮流が変化する局面でも生き残り、収入面でも潤う傾向にあります。
米・労働省の統計によると、肉体労働者の中でも高所得とされるエレベーター・エスカレーターの修理工の年間所得は中央値ですら10万6000米ドルに上り、円換算で1600万円を超える数字になります。
直近、日本国内は世帯年収1400万円(年収700万円*ダブルインカム)以上でパワーカップルと表現されていますが、ブルーカラー・ビリオネアと比較すると途端にショボく感じてしまいますね。
彼ら(ブルーカラー・ビリオネア:専門性のある肉体労働者)の中には、『私たちの仕事をAIが代替することは絶対に出来ない』と意気込む人もいるようですが、飛ぶ鳥を落とす勢いの現状を見ると、その発言も頷けるかも知れません。
もちろん、医師の世界で聖域とされた手術の現場にダヴィンチ(最新鋭の手術支援ロボット)が登場したように、今後、ブルーカラーの現場仕事を脅かすほどAI技術が進歩する可能性は十分にあります。
しかし、その実現にはまだ相当の時間を要するということも事実です。
AI時代の変遷期、ブルーカラー(肉体労働者)とホワイトカラー(頭脳労働者)の地位逆転は一過性の現象として終わるのか。
この問いに対する最終的な回答は未だ出ていませんが、少なくとも、今後10年間のトレンドになることだけは確実だと考えます。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太





