今日のテーマは、『もしもシニア世代だったとしても、私が年金制度改革に怒らない理由』です。
今週27日、日本の社会保障制度にとって一つのエポック・メイキングな出来事がありました。
それは、年金制度改革法案の修正内容について3党(自民・公明・立憲)が合意し、厚生年金の積立金の活用による基礎年金の底上げが正式に決定したというものです。
正確には、4年後(2029年)に実施される年金財政検証の結果を以って確定するのですが、人口ピラミッドが大きく歪んだ今、実行されることはほぼ既定路線とされています。
ご存知の通り、厚生年金は主に会社員らが加入しており、公的年金制度としては『2階部分』に該当しています。
その積立金を基礎年金(1階部分)の底上げに活用しようというのですから、そのまま実行すれば厚生年金加入者(主に会社員)から大きな反発を受けそうですよね。
しかし、基礎年金(1階部分)は全国民が受給資格を有しているため、それが底上げされるとなれば、一概に『会社員たちが損をする』とは言い切れません。
結論からお伝えすると、今回の制度改革で損益分岐を決定する要因は『年齢』です。
早速、厚生労働省から修正案が実行された場合の試算が公表されており、それによれば『現役世代』に該当する人たちの受給総額が大きくプラスに転じていることが見て取れます。
例えば、私と同年代である現在40歳の男女では、65歳から年金受給を開始した場合、一生涯に受け取ることのできる年金総額が現行制度と比較して約300万円も増えることになる。
もちろん、年齢が上がるにつれてプラス幅も減少することになりますが、現在50歳を迎えている方々でも、総額として170ー180万円の上乗せ効果があることが示されています。
反対に、男性は63歳以上、女性は67歳以上の年代で現行制度と比較した際の受給額がマイナスとなり、現在70歳の方々では総額20万円ほどの減額になります。
当然、改悪(受給額が減額)されるシニア世代としては面白くなく、今回の3党合意を受けて、怒りや嘆き、失望といった様々な意見や感情が渦巻いています。
しかし、この件について、私自身は何も感じることはなく、限りなく他人事(ヒトゴト)に近い感覚で静観しています。
それは、先ほど触れた通り、自らが『プラス』になる世代だからという訳ではありません。
その証拠に、300万円の積み増しがあると聞いても嬉しいという感情も湧いていません。
だからこそ、仮に、自らがシニア世代だったとしてもまったく怒らない自信があるのです。
その理由は、元々、日本の社会保障制度(特に年金システム)をまったくアテにしておらず、リタイアメント・インカムとしてはじめから期待していないから。
予め断っておくと、社会保険料(年金・健康保険)はこれまでの20年間で一度も滞りなく納めており、日本国民としての義務はしっかりと果たしているつもりです。
ただし、それは日本の社会保障を信頼しているからではなく、保険料の徴収方法が泣く子も黙る『強制徴収』というシステムを採用しているから。
保険料の滞納により資産を差し押さえられなどしたら、たまったものではありません。
社会保障については、近い将来、機能不全に陥ることは以前から分かり切っていたため、20代から徹底して自助努力による資産形成を継続してきました。
どうにもならないことを嘆くよりも、建設的な解決策を検討・実行していくほうが、人生はより良く展開していくと感じています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太