今日のテーマは、『金利ある世界が戻りつつある今、果たして国債は有益な選択肢になり得るか』です。
少しずつ、本当に少しずつですが、金利ある世界が戻りつつあると感じますね。
特に、先月(8月)はメガバンクを中心に普通預金の利子が支払われたため、そのこと(金利ある世界への回帰)を改めて確認した方々も多いのではないでしょうか。
黒田バズーカが炸裂して、ゼロ金利という異常が『定常』になってしまっていた頃、仮に1000万円を銀行に預け入れたとしても、半年毎に支払われる利子はわずか数十円という時代がありました。
しかし、日本にも金利が復活して普通預金金利が0.20%ほどまで高まった今、同等の金額(1000万円)を預け入れると、半年毎に1万円近い(20%課税を受けるため)利子が振り込まれます。
冷静に考えれば『1+1=2』レベルに当たり前のことですが、10年余り続いたゼロ金利で感覚の麻痺してしまった日本人にとっては、なぜか『得した!』ように感じてしまうので不思議ですね。
このように、多くの方々が『金利』の存在を改めて認識し始めた昨今ですが、個人投資家たちの選択肢(投資先)として『個人向け国債』が密かに注目を集めていると言われています。
基本情報だけ整理すると、個人向け国債は金利別に固定3年、固定5年、変動10年の3種類が用意されており、其々半年毎に利子を受け取りながら償還時(満期)に元本の返還を受けるシステムです。
足元では利率が1%を超えている(税引き前)ものもあり、先ほどご紹介した普通預金金利と比較すると単純に『約5倍』のリターンが得られることになりますね。
また、1000万円以上が対象の大口定期預金では利率が0.375%(税引き前:実質0.3%ほど)まで引き上げられますが、これと比較しても国債は3倍近くの超過リターンを享受することが出来る。
このように紹介していくと魅力を感じる人たちも一定数いそうですが、果たして、それは投資対象として本当に『有益な選択肢』となり得るのでしょうか。
ここで、金利ある世界を『有り難い』と感じることから一歩進んで、金融の感覚が麻痺してしまった日本人が取り戻さなければならない『常識』があります。
最も分かり易いものとして挙げられるのは『72の法則』で、仮に保有資産を複利運用した際、運用資産(元本)が2倍になるのに要する『年数』を計算するという方法です。
仮に、多くの日本人が魅力を感じてしまう『年率1%』で資産を運用した時、それが2倍に到達するには72年間という時間を要し、30歳からスタートすると100歳でゴールを迎えることになります。
*具体的な計算は省略します。有名な法則なので、知らない方はご自身で調べてみてください。
ここからは私見になりますが、それだけ(超)長期間の時間を充当できるのであれば、適切な水準のリスクを取ることで平均して『年率10%前後』の運用益は享受したい。
そうすれば、堅めに見積もっても保有資産は10年毎に倍化していくことになり、私たちの人生が有限であることを考慮しても、有効活用できる可能性が格段に高まります。
もちろん、長期間の異常事態(ゼロ金利)にリハビリを要することは理解しています。
しかし、私たちが『金利』に関する常識を取り戻さなければならないことも事実です。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太