今日のテーマは、『海外投資家の攻勢を受ける今、私たち日本人が東京から追い出される日』です。
コロナ禍以降の直近2〜3年間、日本国内の不動産価格が顕著に上昇していますね。
特に、東京23区内は国内全体を見渡しても『別格』の扱いで、不動産価格研究所から先日発表された新築マンションの平均価格(2025年1ー6月期)は1億3064万円となっています。
この傾向(新築マンションの平均売買価格が1億円超え)は3年連続で、前年同月比としても20.4%プラスという高い水準。
正直、ここまで来ると、巷で話題のパワーカップル(個人年収700万円超のダブルインカム世帯)でも手を出すことは現実的でないレベルに到達していると言えます。
もちろん、理屈として購入することは可能ですが、不動産を対象とした10倍レバレッジの信用取引にはファイナンシャル・プランナーとして経済的合理性を見出せません。
全国的に不動産価格が上昇する要因として挙げられるのは、資材(建材費)価格の高騰に加えて、労働規制や人材不足等の理由で人件費が高騰しており、建設コスト全体が上昇しているから。
また、大都市圏(特に東京23区)では(不動産を取得する意味で)競合相手が国内だけに限定されず、海外の富裕層・投資家も物件を買い漁り始めており、それも上昇要因に繋がっています。
*当然のことですが、他のあらゆる対象と同様に、不動産も需要・供給バランスにより売買価格は調整されており、ウェイトが前者(需要)に傾けば市場で取引される価格は上昇します。
実際に、某・大手住宅メーカーの自社調査では、昨年(2024年)東京23区内で取引された2億円超の物件に限定すると、購入者の約半数が外国人(国外居住者)だったというデータもあります。
また、三菱UFJ信託銀行が行った別の調査では、大手13社に対する新築住宅の販売実績アンケートで、実に9社は23区内の物件の外国人購入者が2割以上(3割以上は5社、5割以上も1社)だったと回答しました。
さらに、最新版(2025年版)の土地白書では、海外富裕層・投資家による日本国内の不動産購入額が昨年1年間だけで約9397億円にのぼり『1兆円』の大台に肉薄することも判明しています。
それでは、なぜ日本の不動産市場に海外の投資マネーが流入しているのでしょうか。
その理由は大きく2つあり、一つは、近年は大きく高騰していると言えど、海外諸国の大都市圏と比較したとき日本はまだまだ『割安感』があるから。
事実、東京・一等地の不動産価格を基準(1)とした時、私が拠点を置く大阪は0.7に留まるのに対して、香港は2.6、シンガポールは1.4、上海・台北はともに1.6と軒並み高水準を記録しています。
これは私自身も海外から帰国した際に実感することですが、日本ほどすべての生活インフラが充実しており、治安が良く、生活コストが安価に抑えられている先進国は他に見当たりません。
前述の調査では、日本と比較して香港は2.6倍、シンガポールは1.4倍とのことでしたが、実際の体感レベルの生活コストはその数字からさらに倍(3〜5倍)したものですよね。
元々、あまり広くない国土に1億2000万超の人が犇めき合う日本ですが、人口減少に伴い政府も都市集約型の生活スタイルを奨励しており、今後はますます大都市圏に人口が流入すると予想されます。
しかし、現実は海外富裕層・投資家とのマネーゲームに敗れて締め出されつつあり、もともと居住していた日本人が追いやられているのが実情です。
近い将来、私たち日本人が首都・東京から追い出されてしまう日はやって来るのか。
時代の変化を察知して、真の競合相手を見極めるときが来ているのかも知れません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太