今日のテーマは、『メディアが報じる数字を鵜呑みにしない力は、資産形成にも求められる』です。
元来、日本人は『メディア耐性』がそれほど高くない国民性だと言われています。
要は、大半の方々がメディアで報じられる情報・数字を鵜呑みにするということ。
和を以て尊しとなす民族性は、もちろん好ましく働くこともありますが、デメリットは権力に対して従順で、自らの頭で物ごとを考えなくなってしまう方向にも作用します。
海外では、新聞・ニュース等で報じられる情報であっても『一つの情報』としては受け取るものの、それをそのまま受け容れるような人たちは殆どいません。
何故なら、それを報じているメディア・サイドにも明確な『意思』があり、それを報じることで大衆を(ミスも含めて)リードしようしていることを見抜いているからです。
しかし、良くも悪くも『人が良い』とされる日本人は、その傾向に逆転現象が起きており、権威性があればあるほど、情報・数字をそのまま受け取るという人が大多数なのではないでしょうか。
例えば、次のようなニュースが典型的な事例です。
先日、某ニュース・ネットワークが実施した調査により、石破内閣の支持率が前回調査から1.3%ポイント増加して、34.6%に上昇したという報道が流れて来ました。
そのまま文面通りに受け取れば、当然、現政権にとってポジティブな内容ですよね。
とても素直な日本人の大半は、情報に触れることで好意的に感じるかも知れません。
直近の出来事と言えば、先日公式サイトでも取り上げた、厚生年金の積立金の活用による基礎年金の底上げに関する話題がありましたよね。
また、国民人気の高い小泉進次郎氏を新たに農林水産大臣に抜擢して、備蓄米の放出による市場の米価格の安定化を図るという動きも印象に残っています。
これらが国民心理に作用して、内閣支持率を上昇させているのでしょうか。
もちろん、そのストーリーは正しいかも知れませんが、実態は真逆である可能性も孕んでいます。
何故なら、調査の詳細を読み込むと分かるのですが、対象となったのは18歳以上の男女約2400名で、そのうち有効な回答として扱われたのは1000名程度に留まるという記載があるからです。
約30年前、私が通っていた中学校も同程度の規模でした。
つまり、少しでも統計学の基礎知識がある方なら分かると思いますが、母数1000人の集団における数%の結果の増減は『誤差』の範囲を脱し得ないということです。
先ほどの事例で言えば、内閣支持率が約35%ということはおよそ350名前後が好意的な意見を持っており、母集団1000人に対しては10名ほどの翻意により簡単に数字が書き変わってしまいます。
間違って欲しくないのは、決して該当調査に対して批判している訳ではなく、また、公表されたデータの信憑性を疑っている訳でもなく、調査に関わる方々のマンパワーの限界も理解しているということ。
あくまで、報道される情報・数字は『一つの情報』として受け取り、その情報から連想される解釈と実態が異なる可能性があることを、冷静に判断して欲しいと思うのです。
世界三大投資家の一角、大冒険投資家としても知られるジム・ロジャーズ氏は『大衆が信じているところではなく、むしろ疑っているところにこそ真実が潜んでいる』という言葉を残しています。
常に思考回路を働かせることは、資産形成(投資)に限らず全てに共通して大切なことです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太