今日のテーマは、『対外純債務4000兆円超えにも関わらず、米国が世界の覇権を握る理由』です。
先日、財務省より2024年末時点の対外純資産の発表があり、日本のそれが約533兆500億円にのぼることが判明しました。
対外純資産とは、日本政府や企業、個人が海外に保有している資産の総額から負債を差し引いたもの。
対GDP(国内総生産)として250%超、累積債務1000兆円を軽く突破している日本ですが、それでも簡単にデフォルトしないことの一つの根拠とされる安心材料がそれです。
話を戻すと、日本の対外純資産は前年比で13%(額として約60兆円)プラスを記録して500兆円の大台を初めて突破したものの、約569兆円と躍進したドイツに競り負けて世界第2位。
惜しくも、33年間維持してきた『首位』の座からは陥落してしまいました。
それでも、この分野におけるトップランナーであることに変わりなく、理屈上、日本(企業・個人も含めて)は海外にも莫大な純資産を保有していることを意味しています。
しかし、公表されるランキングを見ていて、不思議に感じることがあるのも事実ですね。
それは、タイトルでも触れる通り対外債務(借金)が4000兆円を突破して世界最大の『純債務国』の座を独走している米国が、今尚、世界経済の覇権を掌握し続けているということです。
ご存知の通り、双子の赤字(財政収支と経常収支)に苦しみ続けている同国ですが、この分野でも第二次世界大戦の敗戦国(ドイツ・日本)の後塵を拝しています。
前述の通り、純債務額も日本円換算で『4000兆円超』という天文学的レベルに到達しており、一筋縄に解決が出来ないことは誰の目から見ても明らかです。
それでは、なぜ、米国は世界経済のトップに君臨し続けられるのでしょうか。
それは、先日『返済不能にも関わらず最高格付を維持してきた米国債が抱えるジレンマ』のタイトルでご紹介した記事の内容にも通じています。
少しだけ振り返ると、莫大な累積赤字があるにも関わらず、米国債は長期に最高格付を付与されてきた歴史があり、最高位は陥落したとは言えど、今尚高い水準を維持し続けていますよね。
その理由は、1944年のブレトン・ウッズ協定から同国が『基軸通貨特権』を保有しており、それ故『ゲーム・チェンジャー』の地位を与えられているからです。
繰り返し触れる通り、各方面に抱えている莫大な債務(借金)を現行ルールで解消することは実質不可能ですが、いざとなればゲーム自体の『ルール』を変更できる権利を米国は掌握しているのです。
つまり、米国は『強い』からこそ世界経済の『覇権』を握っているのではなく、そもそもの『覇権』を持っているからこそ『最強』の地位を維持し続けられている。
世の中の常かも知れませんが、そこには世界最大の『理不尽』が存在しています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太