今日のテーマは、『過去最高の税収75.2兆円という報道は、日本の明るい未来を示しているか』です。
先月末6月30日、昨年度(2024年度)の一般会計における日本の税収が約75.2兆円に達することが判明し、5年連続で過去最高を更新することが確定しました。
この数字は、前年度(2023年度)の約72兆円を3兆円超上回るもので、税収が70兆円の大台を突破するのは、初めて記録した2022年度から3年連続で常態化。
当初、政府は予算案の段階で69.6兆円ほどになると試算していましたが、法人税や消費税の上昇圧力を受けて、全体として約5.5兆円も上振れしたことになります。
これにより、歳入から歳出を差し引いた決算剰余金は約2.3兆円のプラスとなり、予定していた赤字国債の発行を約5兆円分取り止めるという報道まで出始めました。
メディアは周辺情報も含めて好意的に報じていますが、果たして『真実』はどうなのでしょうか。
ニュース・リリース以降、税収の質(増収要因)については他にも多くの方々が指摘しているため、ここで触れようとは思いません。
ただ、そのこと(税収増の質が良くないこと)に目を瞑ったとしても、日本の未来を決して楽観することが出来ないポイントがそれ以前に存在しています。
最も分かり易いもののひとつは、財務省の公式サイトに掲載されている、日本の一般会計(歳入・歳出)が円グラフで示されているページだと考えます。
ちなみに、令和7年度の歳出は概算要求ベースで115兆円を突破しており、社会保険料・防衛費・公共事業・地方交付税交付金・国債費(償還・利払い)等々の総額がそれに相当しています。
つまり、2025年現在、単年で消化(経費計上)される予算に限定しても、日本国を1年間運営するのに少なくとも115兆円の資金が必要だということです。
しかし、冒頭にご紹介したとおり税収は約75兆円であり、その他の収入・約9兆円をプラスしても歳入(国家としての収入)総額は84兆円ほどしかありません。
四則計算ができる人なら分かると思いますが、歳入と歳出には約30兆円もの巨額なギャップがあり、この溝を毎年赤字国債として新たな『借金』を創出して埋めているのです。
確かに、今回報道された税収の増加により、国債費を除くPB(基礎的財政収支)は健全化される傾向にあることは事実です。
ただ、今後も毎年1兆円を超えるペースで増加し続ける社会保障費と、米国・トランプ政権から要求される防衛費の積み増しを考慮したとき、心許ないと感じるのは私だけでしょうか。
仮に、それら(主には社会保障費と防衛費)歳出の上昇分を、今後も単純な税収アップで賄おうとすれば、確実に国民生活は疲弊して破綻へと向かっていくことが想像できます。
まさに、行くも地獄・帰るも地獄という状態ですね。
日本がポイント・オブ・ノー・リターン(回帰不能点)を過ぎてしまった今、私たちは想像している以上に激動の時代を生きることになるかも知れません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太