今日のテーマは、『トランプ・ゴールドカードの申請者急増が示す、米国経済が持つ力強さ』です。
今年3月に開催された米・施政方針演説でも触れられていた『トランプ・ゴールドカード』の申請受付がスタートして、早くも希望者が殺到しています。
これは、米国に対して一定額(500万米ドル:約7.5億円)を投資することを条件に、永住資格と就労資格が与えられるというもの。
トランプ氏が『グリーンカード(米国永住権)の最上級資格』と表現したことでも注目を集めましたよね。
冒頭でも触れたとおり、申請希望者の事前登録は6月11日にスタートしましたが、ちょうど1週間後の6月18日時点ですでに『約7万人』に達していると言います。
僅か7日間で、少なく見積もっても『50兆円』を超える資金を獲得したことになりますね。
トランプ政権は最終的に100万人規模の申請があると見込んでいるようですが、あながち空想とも言い切れず、実現すれば(準クラスも含めて)富裕層のまとまった移動が起こることになる。
この動向に米国経済が持つ力強さを感じるのは、該当のゴールドカードが魅力的だからではなく、むしろ『メリットが見出せない』という特徴を持つからです。
トランプ政権は、取得者に対して何らかの優位性があることを匂わせますが、現時点でそれは明確に示されておらず、どちらかと言えば『何もないのではないか』という雰囲気が漂っています。
*従来の投資移民プログラム(EBー5)よりも、永住権取得までの期間(5年)が短縮される可能性はあり。また、雇用創出(10名以上)条件も付されていないようです。
仮に、米国がオフショア制を採用して金融センターとして機能していれば、富裕層を惹きつける魅力としては十分な『節税』というメリットが存在することになりますね。
しかし、課税という観点では、米国は世界最強のIRS(米国歳入庁)が管轄しており、居住地に関わらず全世界での所得に対して自国(米国)に納税することを求める数少ない(唯一?)国です。
実際、その点が最終的かつ最大のネックになり、ゴールドカードに対する評価は富裕層の間でも二極化しているという現実があります。
ただ、既に7万人が希望していることも確かであり、これらの人たちはリスク・ベネフィットを勘案した上で『申請』というアクションを起こしたことになります。
恐らく、それらの人々(申請者)は約7.5億円もの『通行料』を支払っても尚、米国市民になることでそれ以上のリターン(経済的利益)を得る自信があるということですね。
今尚、米国の株式市場は取引額として世界全体の約53%を占めている言われており、GDP(国内総生産)は30兆米ドルに迫り断トツの世界首位を誇っています。
米国内だけでこれだけ巨額な『お金』が流れている訳ですから、それを少し汲み取るだけでも、相当な経済的な豊さを享受できることは疑う余地がありません。
自然界と同様、人間社会もエントロピー(無秩序さ・乱雑さ)増大の法則により支配されており、栄枯盛衰、米国の権力も一極集中した20世紀後半から落ち込みが見られることは事実です。
しかし、それでも2025年時点の『覇権国』であることに違いはなく、その地位を簡単に失うことは考えられません。
少なくとも30代、40代の私たち世代が生きている間は、構図が大きく変わることはないでしょう。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太