今日のテーマは、『私たち個人投資家は、投資の神様から果たして何を学ぶべきなのか』です。
投資(資産形成)という分野に限らず、上手くいっている人たちを『見習う』という行動はひとつの有効な戦略だと言えます。
2025年7月現在、存命の世界3大投資家として名前が挙がるのはウォーレン・バフェット氏、ジョージ・ソロス氏、ジム・ロジャーズ氏の3名。
いずれもわずか一代のうちに巨万の富を築いたレジェンドで、私自身、資産形成(投資)をスタートした20代半ばから彼らについて書かれた書籍は片っ端から読み漁ってきました。
しかし、一口に『見習う』と言ってもどのようなスタンスで臨むかにより、投資家としての明暗ははっきりと分かれてしまうと感じています。
恐らく、世間的に多数派を占めるのは、彼ら(神様たち)がどのような『対象』に投資しているかばかり追い求めて、根底にある本質を理解することなく、行動を模倣しようとする人たちですよね。
確かに、彼ら(神様たち)と同じもの(投資対象)に投資しさえすれば利益が上がりそうな気もしますが、理屈的に正しいことが、そのまま現実世界でも成立するとは限りません。
例えば、前述したバフェットはそれまでの投資人生でスルーして来た日本市場に目を向けて、5大商社株(伊藤忠・住友・三井・三菱・丸紅)を取得したことを2020年に公表しました。
もしかしたら、この報道を受けて5大商社株を取得した人たちもいるかも知れませんが、ニュースリリースが出た時点で、すでにバフェット氏が感じていた『旨み』は失われてしまっています。
実際、同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社は5大商社に約138億米ドル(約2兆円)を投じて、わずか5年間のうちに約100億米ドル(1.5兆円)もの含み益を抱えています。
対して、上記の戦略(バフェット氏の行動の模倣)をとった人物で、金額的なものは別として、同程度の運用リターンを得られた人はいないのではないでしょうか。
極論、その戦略を追求していくのであれば、同氏の資産の大部分を占めるバークシャー・ハサウェイ株を取得するという方法もアリなのかも知れませんが。
かつて、世界的ベストセラー・金持ち父さんシリーズの著者であるロバート・キヨサキ氏は、自らの著書の中で子どもの頃の次のような記憶を述懐しています。
ある人が『資金が10万ドルあります。何に投資したら良いですか?』と質問すると、金持ち父さんは苦虫を噛み潰したような顔をしていた、、、、
20代半ばでは分かりませんでしたが、今ではこの文章の意味を正しく理解することが出来ます。
私たち個人投資家が『投資の神様』から学ぶべきことは、世の中で起きている出来事・物ごとの『捉え方』とそれに対する『考え方』です。
神様ジム・ロジャーズ氏の言葉を借りれば、『大局を掴む力』とも表現できるでしょうか。
現実世界では、まったく同じ『事象』が再び起きることはありませんが、抽象度を上げて捉えれば『同じようなこと』が繰り返されて起こっていることも事実です。
それを精度高く見抜く力を付けるためにも、私たちは投資の神様のソフトウェア(思考回路)をインストールしていく必要がある。
そのことの方が、行動を模倣するよりも何倍も、何十倍も大切なことなのです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太