今日のテーマは、『日本の財政健全化に、逆行し続ける業界』です。
常々、
『井上耕太事務所:公式ブログ』では、
『日本財政はヤバい』という旨の情報発信を継続しています。
理由として最も大きいのは、
『GDP(国内総生産):約500兆円』ほどの金額に対して、
国債・地方債の累計発行金額が『200%(約1000兆円)』を超えてしまっている事。
実際、
国家財政の1つの『警鐘』として捉えられるこの基準値を超えて、
『経済的有事』を迎えずに、事態が収束した国家というものは存在しません。
例えば、
1990年代から2000年代初頭に起こった『ロシア危機』では、
ソビエト連邦から引き継がれる形で抱えられた『国家累計債務』は、
対『GDP(国内総生産)』比較で60%程度のものでした。
また、
その後に起こった『アルゼンチン』における国債デフォルトも、
『年金デフォルト』『預金封鎖』等、フルコース展開されたにも関わらず、
『国家累計債務』の対GDP比は『50%』を少し超えた程度。
更に言えば、
数年前、様々な要因が重なって、世界を震撼させた『ユーロ危機』においても、
その起点となった『ギリシャ』の累計債務は、対GDP比『180%』に満たない数字です。
こう列挙していくと、
日本国の累計債務『1300兆円(国債・地方債総額)』という金額に加えて、
『対GDP比:200%超』という数値が、如何に『ヤバい』かが分かると思います。
少し前の公式ブログで、
ここ3、4ヶ月ほどの間に、日本国内にある金融機関からの『海外送金』の規制が、
一気に厳格化し、実質、『不可能』なレベルにまで陥っている事をご紹介しました。
当然、
国家としては『キャピタル・フライト』を恐れている訳で、
2024年に控える『紙幣刷新』というイベントまで考慮すると、
遽にきな臭く、『経済的有事』が現実味を帯びて来たと感じます。
話を戻すと、
日本国家の『累計債務』がここまで積み上がり、今尚上昇する主因として、
現時点でも『歳出(国家の支出)』最上位を占める『社会保障費』がある事は、常々お伝えしています。
具体的には、
『年金』『健康保険』『福祉』の分野で支出されているお金の事ですが、
2016年に『年間30兆円』の大台を突破してからは、
年々『1兆円』ペースで支出増大し、『歳出』を押し上げ続けています。
当然、
『超高齢化』の流れの強まる今後は、更に、そのスピードは増すと考えられ、
『税収』が飛躍的に増加することは想像し難い現状から考えると、
日本国の『財政健全化』は、理屈的には、未来永劫、達成は『不可能』です。
ただし、
この現状を放置し続けても、国家の財源が『無限』という事は有りませんから、
どこかのタイミングで、具体的な『改善策』を講じて実行していく必要がある。
その実例は、
単純に、『社会保障費』としてカバーしている範囲を狭めて、『歳出』を抑制するか、
あらゆる分野で『大増税』を敢行し、歳出をカバーするだけの『税収』を得るかです。
しかし、
その現状において、理想(理屈?)とは完全に『逆行』している分野があり、
それは、私が20代の頃に所属した、『製薬・医療業界』だと考えるのです。
ちょうど2ヶ月前の8月28日、
厚生労働省は、『遺伝子治療薬』の国内初となる『保険適用』決定し、
足の血管再生薬『コラテジェン』は、投与1回の薬価が『約60万円』を付けました。
この薬剤は、
重度の動脈硬化により足の血管が詰まった患者に対して適用し、
『新しい血管』を作る遺伝子を注射して、治療するというもの。
今回の『保険適用』により、
患者負担は、通常医療同様『原則3割』に限定された上、
『高額療養費制度』等の適応を受けると、その実質負担は殆どが『公費』となります。
現時点でのピーク時患者数は、『年間1000人』に及ばないと推定され、
1薬剤としての販売額は、『年間12億円』規模に収まると見込まれます。
ただし、
『遺伝子治療薬』は、海外同様に、日本国内でも市場が見込まれる為、
製薬大手・ベンチャー共同での開発が進んでおり、将来的に『保険適用』が進む事が予想されます。
1つ、1つの薬剤としては『オーファン(希少疾患)』に対する適応でも、
今後、『積み上がり』を考えた場合は、決して『無視できない数字』です。
約半年前、
5月末に国内承認された、白血病治療薬『キムリア』は、
1回の投薬が『3349万円』と、『国内最高薬価』となり注目を集めました。
製薬業界も、
現在、新薬開発が難航している企業が多く、『一攫千金』に狙いを定めて、
『高額治療薬』の分野に、あらゆる資源を投入して、研究開発を進めています。
当然、
『開発にかかる難易度』と『費用対効果』を天秤にかけた際、
『高額治療薬(高収益商品)』を選択する事は経営的に正しい選択ですが、
日本国家の『財政健全化』という観点で見たら、逆行してしまう状況です。
これからも、この『大きな流れ』自体は、変わりません。
ただし、
このまま『放置』することが出来ないのは『現実』なので、
日本国が、この分野において、どのように『舵取り』するか注目していきましょう。
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代表 井上耕太