今日のテーマは、『3.4年は、果たして長期投資と呼べるのか??』です。
最近、
某調査会社が公表した『投資信託』に関するデータで、
少し興味を惹かれるものが出ていました。
『日本人の投信保有が長期化 2018年は平均3.4年保有に。』
『金融危機後、2008年以来10年ぶりに長期化の傾向見せる。』
タイトルからある程度推測できますが、
日本人における『投資信託』の保有期間が、
昨年2018年においては『平均3.4年間』まで延長する傾向を見せた、と。
前述の通り、
この数字は、金融危機のあった2008年以来10年ぶりの水準で、
直近で最短だった2013年の『平均1.7年』から5年間で『2倍』に延びた計算です。
確かに、
森信親金融庁長官が就任して以来、暴利を貪ってきた金融機関は是正勧告を受け、
『投資家利益』を真に求める商品提案・販売方法への移行が、進みつつあります。
(*それでも未だ、完全排除には程遠いのが実情ですが。)
具体的には、
『毎月分配型』等の金融機関サイドから見た『ドル箱商品』を排除し、
投信を『短期売買』で販売手数料を稼ぐ『従来の営業方法』を抑えられるようになりました。
また、
近年対象拡大した『iDeCo:個人型確定拠出年金』に加えて、
昨年(2018年)から『つみたてNISA』なる制度も開始し、
国民の『長期投資思考』は浸透しつつあるのかも知れません。
事実、
『つみたてNISA』については、制度開始の昨年1年間だけで、
20代、30代の方々を中心に『100万人』が口座開設し、
この数字だけ『表面的に』見れば、関心の高さが伺えます。
更に、
金融機関一任で運用する『ラップ型投信』や、
複数資産・セクターに分散投資する『バランス型投信』も長期運用が主流で、
ここ数年間でともに残高は大きく拡大しています。
実際、
『DC:確定拠出年金』専用投信も合算での値になりますが、
日本市場における『純資産残高』は昨年2018年末時点で、
『18.6兆円』と10年前から比較して『2.3倍』に増えています。
これは、『公募投資信託』市場全体の『約2割』を占めます。
このような社会全体の流れもあり、日本人の投資信託保有期間は、
『平均3.4年』と長期化の傾向を見せている、という話なのですが。
これ、本当に『長期化』と呼べるものなのでしょうか??
『結論』から言うと、
『3.4年』という時間感覚は、私見では『ど短期投資』であり、
この数字は『長期投資』と呼べるものでは、到底有りません。
常々お伝えしていますが、
私は『インカムゲイン』狙いの『長期投資家』というスタンスであり、
『キャピタルゲイン』狙いの『短期投資家(ギャンブラー)』とは一線を画します。
いつも説明している事ですが、
市場の『歪み』を出し抜く戦略の『短期投資』は、
自身が余程『インサイド情報』を得られる立場にいない限り、
『ギャンブル』の領域を越えて、取引することは出来ません。
事実、
『インターネット』が高速化し、『AI』も台頭してきた現代では、
市場の『歪み』も一瞬しか存在し得ず、他者を出し抜く可能性は更に低くなっています。
その状況において、
あらゆる人に情報が『フェア』に入手可能になった事は良い事ですが、
『資産形成』は、『市場成長』にベットした真の『長期投資』を狙うのが本質なのです。
この観点で見た時、
『長期投資』の最小ユニットとして考えられるのは、
どう見積もっても『10年間』という数字になります。
逆を返せば、
『10年間』というスパンを下回る期間でリターンを得ようとするなら、
それ相応の『リスク』も引き受けた上で、『ギャンブル』に乗るしか無い。
にも関わらず、
日本人にこのような『金融リテラシー』のある方は少ないですから、
『元本保証で、高リターン』という幻の金融商品に投資してしまい、
『元本保証詐欺』が未だに横行しているのが実情です。
『リスクは取りたく無い(元本保証されたものが良い。)』
『でも、高利回りのリターンは欲しい。』
海外諸国から見れば『アンビリーバブル』に見えるのですが、
悲しいかな、未だにこのように考えてしまう方々は多く存在します。
また、
今回公表されたデータは、あくまで『平均値』であり、
『中央値』ではない為、現実をどこまで正確に表しているか分かりません。
例えば、
投信保有期間『1年』という2人と、保有期間『10年間』という1人、
上記3人の『平均保有期間』を求めると『4年』という数字が出て来ます。
が、
これを国民全体というレベルに拡大して考えた時、
この『4年間』という数字に、どこまで意味が有るかは不明です。
このケースでは、
『中央値』は限りなく『1年』に近い数字となっている事が推測出来、
『平均値』は、実情から離れて、『釣り上げられた数字』になります。
当然、
前述のような状況の日本にも、『長期投資家』は確実に存在し、
『10年』を超えるスパンで投信保有する方々も、少数ながら存在する。
そういった方々は、『絶対数』としては少数派ですが、
『保有期間』としては大きなインパクトを与えるので、
全体として『平均値』は釣上げられる傾向にあります。
同様の事は、厚生労働省が定期的に発表している、
『勤続期間』『事業規模』との相関性から平均値を算出した『退職金支給表』にも見られます。
こちらも、
少数派の『高額退職金受給者』が全体を嵩上げし、
実態とは少し乖離したデータになってしまっています。
話が逸れました。
『3.4年』は、決して『長期投資』では有りません。
私自身、
真の『資産形成』には、『経済成長』にベットするスタンスで、
最小ユニット10年間以上の『長期投資』として取り組む事をお勧めします。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太