今日のテーマは、『大学初任給増額により、生涯賃金は増えるのか??』です。
『ロジック』は完全に破綻していると思うのですが、
労働市場の『人手不足』が、声高に叫ばれ続けていますね。
『人口減少』が暫くの期間(数十年から100年程度)継続するこの国で、
社会全体で必要とされる『サービス』の量は、間違いなく減少しています。
また、
『少子高齢化』と言えど、『労働』出来る人口は一時的に増加しているはずで、
それを上回るスピードで『需要』が増加しているとは、到底、考えられません。
要は、
現在、一時的に、サービスの『需要』と『供給』が逆転している状態で、
どこかで『時代』がその事に気付けば、『歪み』も自然に調整されます。
この辺り、
『お金』という面での『バブル』は、これまでの歴史で経験しましたが、
それが、現代では『サービス』という分野で起こっている事になります。
両者に共通するのは、
『バブル』は形成されてから、熱狂している間は誰も気付かず、
そして、それは未来永劫続く事はなく、必ず『崩壊』が訪れるという事です。
私に限らず、多くの方々が情報発信し続けていても、
世間一般9割強の方々は、その『崩壊』のタイミングでようやく気付くのですが。
話を本題に戻します。
前述した慢性的な『人手不足(?)』により、
労働市場の『賃金』が上昇する傾向が続いているかのよう見えます。
私自身、
『アルバイト』というものを経験したのは、大学生時代まで遡り、
ついこの前のように考えていても、もう15年近く時間が経つので驚きです。
当時、
『時給850円』スタートは都市部の高い基準と感じていましたが、
現在では、『時給1000円』を切るそれを見つける方が困難なほどですね。
この辺り、『時代の流れ』を実感します。
それと似たような報道で、先日、次のようなニュースが出ていました。
『大卒初任給、増額鮮明。大手企業を中心に、優秀な人材獲得へ厚遇競う』
『人手不足』を背景として、
就職・採用活動では、学生優位の『売り手市場』が2019年も継続しており、
大手企業を中心に相次ぎ『厚遇』を打ち出し、優秀な人材獲得にしのぎを削っている、と。
具体的には、
来年2020年4月入社の『大卒初任給』を、『みずほ証券』は1万円引上げ、
『ユニクロ』も2割と大幅増額し、それぞれ『25万5000円』とするようです。
昔の話で恐縮ですが、
私が就職活動をしていた約12年前、東証一部上場で、
誰もが名前を知る大手企業でさえ、大学初任給は『22万円』程度が上限でした。
そう考えると、10年程の期間で『約15%』上限が上がった計算です。
『人手不足』『新卒初任給増額』等の言葉が踊ることを考えると、
いかにも、『売り手(被雇用者サイド)』にとって有利に聞こえます。
しかし、
果たして、これは『労働市場(賃金)』について朗報なのでしょうか??
残念ながら、私自身、そうは考えません。
冒頭繰り返しになりますが、内需が継続的に減少していくこの国で、
『輸出入』の海外取引はあるものの、総合的に『サービス需要』は減少します。
『鶏と卵』のような話になりますが、
必要とされる『サービス』の、国全体としての『需要』が減るので、
『供給量』も中長期的には目減りし、『GPD(国内総生産)』も減少します。
勿論、
『バーチャル・バリュー』全盛のこの時代、日本の人口が減少しても、
『付加価値』の高いサービスが生み出され続けたら回避が出来ますが、
現実問題、そうならない可能性の方が高い事は、容易に想像出来ます。
つまり、
確かに、『労働市場バブル(*私の造語です。)』真っ只中の現在、
『大卒初任給増加』により、企業は『優秀な人材』を確保しますが、
それがそのまま、『生涯年収増加』には繋がらないのです。
前述した通り、『バブル』は必ず崩壊する時が来ます。
未だ嘗て、この常識を覆した『バブル』は存在せず、
それは、『労働市場バブル』についても、然りです。
(相対的に)『優秀な人材』を確保したら、そのまま継続的に雇用し続け、
10年も『会社員』として勤務すれば、『市場価値』が存在する人間は僅かです。
その頃には、
これも日本文化特有の、『社内でしか通用しない人材』が作り上げられ、
支給される『賃金』に関しては、『雇用者サイド』が主導権を握ります。
『被雇用者サイド』としては、
『会社』という名の『檻』の中から脱出して生きていく自信は無いので、
例え『餌(給与)』が減らされたとしても、大人しく聞き入れるしか有りません。
恐らく、『耳が痛い』と感じられている方々も多いですよね。
『人手不足』『大卒初任給増加』
一見すると、耳に聞こえの良い言葉が巷を賑わしていますが、
総合的に考えると、それが決して『良いもの』では無い事は理解しておきましょう。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太