今日のテーマは、『米中貿易摩擦にマスクされた日本市場が孕むリスク』です。
一昨日の公式ブログで、
平穏のうちに走り抜けるかのように思われた『株式市場』が、
某米国大統領の『呟き』1つで、一気に潮目が変わった話をしました。
呟き当初こそ、
『米国市場』『日本市場』共に、予想外の落ち着きを見せましたが、
30代超からの『筋肉痛』が如く、『一日遅れ』で両市場とも大幅下落を見せています。
具合的には、
『NYダウ平均:2万6000ドル』『日経平均:2万2000円』の両大台を下回りましたが、
今夜(日本時間)の『米国市場』の動向次第では、明日の『日本市場』はさらに落ち込みます。
有名な言葉で、
『米国がくしゃみをすれば、日本が風邪引く』とはよく言われたもので、
『米国市場』の動向は、翌日の『日本市場』の動向にモロに影響を与えます。
このところ、
実際の『天候』宜しく、穏やかな『陽気』が続いていましたが、
ここに来て、『株式市場』には一気に暗雲が立ち込めてきました。
こちらも有名な格言ですが、
『ブル(上昇相場)』はゆっくりと登って来て、
『ベア(下落相場)』は窓から飛び出していく、というものがあります。
市場参加者は、
『経験』を積めば積むほど、この言葉の真意を体感しますが、
何度繰り返しても、『トリガー(引き金)』となる出来事を、
完全に、正確に予想することは不可能です。
もしも、
数字上の『保有資産』を減らしたく無いのであれば、
それを強く握ったまま、放さないことが最善策です。
しかし、
それは同時に『投資リターンを得るチャンス』も手放す事になり、
インフレベースの世界経済では、『確実な負けゲーム』を意味します、
つまり、
日本人に最も多い投資選択『預貯金(何もしない)』をする事で、
『保有資産』は、その『実質的価値』を確実に減らすことが出来るのです。
この事実を理解している日本人は、
果たして、どれほどの割合存在しているのでしょうか??
話が逸れているので、元に戻します。
今後暫く、市場動向に注目が集まりそうな『日本市場』ですが、
『米中貿易摩擦』にマスクされ、孕む『リスク』が顕在化されにくくなっています。
確かに、
市場動向は暫く目を離せないことは事実なのですが、
それ以前から、しれっと『異次元空間』に陥っていた数字が、もう1つ有ります。
何の事を言っているか、お分かりになるでしょうか??
『日本国債』の長期金利が、再び『マイナス領域』に陥っている問題です。
大型連休スタート直前の4月25日、
黒田東彦・日銀総裁は、『金融政策決定会合』を受けて開いた記者会見の中で、
『来年2020年春以降も、長期間、低金利政策を継続する』旨を発表しました。
続けて、
『強力な金融緩和を粘り強く続けていく』事で、
今年10月に控える消費増税や、世界経済の動乱も乗り越えていく、と。
その為には、
当初、『1つの目処』としていた『2020年春先』を超えて、
『(超)低金利政策』を継続していく事が必要になってくる、と。
確かに、最もらしく聞こえますよね。
基本的に、
『金利』が上昇すれば、経済は『引締め』傾向に動くことになり、
バブル期等の飽和した状態では、意図的にそれを用いる事で、市場の『過熱感』を落ち着かせます。
反対に、
『金利』が低くコントロールされている状態では、
企業も個人も積極的に投資行動を取り易く、経済は活性化する可能性が高くなる。
ただし、
理屈上は上記の通りでも、教科書通りにはいかないのが現実世界で、
現在の日本では、『低金利』にも関わらず、経済循環が鈍くなったままです。
『日本国債』の金利の話に戻すと、
市場の『低金利』を維持して、経済活動を活性化しようという以外に、
日本政府としては、それをしなければならない理由を抱え続けています。
それは、
公式ブログでは、繰り返し情報発信し続けている事ですが、
日本経済の『累積借金』が天文学的な積み上がりを見せて、
『金利』を上げるに上げられない状況にあるからです。
実際、
日本経済における年間の『国債費』は、
2019年度概算要求ベースで『24兆5874億円』まで膨れ上がっています。
内訳として、
『債務償還費:15兆5289億円』『利払い:9兆0214億円』となっており、
『金利』が上昇することにより、この『利払い費』は必然的に増加していきます。
常々、
『日本の累計債務は返済不可能』という話はし続けていますが、
それでも、『延命措置』を可能な限り継続したいのは、時の政府の常です。
つまり、
『低金利』コントロール政策を解除するという事は、
その『延命装置』を外すことに他ならず、『寿命(破綻)』を早める事になる。
一般的に、
『金利』という話は派手さがなく、市場動向ばかり注目を集めますが、
中長期的な経済を占う時、後者以上の『サイン』を発している事も多々有ります。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太