今日のテーマは、『コロナ禍の厚生年金保険料:上限引上げは、何を意味するか??』です。
先日(8月14日)、しれっと政令改定が公布されたものがあります。
タイトルにもある『厚生年金保険料:上限引上げ』に関するものです。
今日は、確保できる時間も限られる為、
『前置き』なく本題に入りますね(笑)
現時点、
『厚生年金保険料』の保険料率は『18.3%』とされていますが、
この数字を、事業主と被保険者の『労使折半』で負担しています。
また、
算定基準となる『標準報酬額』は、1等級から31等級まで分類され、
最高位31等級は、標準報酬月額『62万円』と定められていました。
これが、
今回の改定では、上限値を『65万円』まで引き上げる為、
該当者に関して、総額として『月額5490円』の負担増、
実質負担としては『月額2745円』徴収額が増加します。
恐らく、
会社員という立場の方で、『給与明細』を毎月、
しっかりと確認している方々は少数派でしょう。
また、
『月額60万円』程の給与支給を受けている方々なので、
『3000円未満』の負担増に、気付く方々も希少です。
ただ、
一見すると、『小さなもの』のように感じられるこの変化にも、
『公的年金システム』の窮状が現れているように感じています。
ご存知の方もいらっしゃいますが、
前述の『厚生年金保険料』の保険料率については、
数年ごとに段階的に引き上げられて、
現在の『18.3%』に至ったという経緯があります。
一応、
『18.3%』で頭打ちさせる約束での漸増作戦だったので、
現状では、一旦、料率引上げをストップしている状況です。
私自身、
将来的に、更なる『保険料率引上げ』は起こると考えており、
その実行なくして、システム維持し続けることは出来ません。
今回、
布石的に導入されたのが『報酬月額:上限引上げ』であり、
『保険料率の上限値を変えない』という約束を守りながら、
『保険料』徴収を増加させることが出来る秀逸な方法です。
以前から、
公式ブログでは、ことある毎に取り上げてきたテーマですが、
『年金システム』は、今、資金繰りに躍起になっているので、
なりふり構わず『保険料徴収額』を増加させに来ています。
これを理解する為には、システムに関して、
『お金の流れ』を把握する必要があります。
『公的年金システム』についてざっくりした数字で示すと、
現在、該当者に支給されている年金の『原資』としては、
『保険料7割:税金2割:積立金1割』で賄われています。
先日、
今年(2020年)第2四半期(4月ー6月)における、
GPIFの運用益は、前期比で『12兆円超』の大幅増額と、
四半期として『過去最高』を記録した報道が有りました。
これを受けて、
『私たちの年金原資は、着実に増加している!』と、
希望的観測を持ってしまった方々もいると思います。
しかし、
前述の通り、年金原資全体に占める『積立金』の割合は、
実際は『1割』程度しか関与していないことになります。
確かに、
増額しないよりは、運用益があった方が良いのですが、
システム全体に与える影響は、想像以上に小さなもの。
そして、
『公的年金システム』が、今後の維持・継続出来るかの鍵は、
保険料と税金の2項目合算で、『9割』を握っているということです。
こちらも、
日々、お伝えしている通り、世界的な経済減速が起こる中、
日本国における『税収』も、数年間は低迷が予想されます。
これは、
『国家運営』としても、勿論、痛手を被りますが、
『年金システム維持』の観点でも、マイナスです。
そこで、
残されたポイントは『徴収保険料』を増加させることになり、
コロナ禍、多くの方々が収入にリスクを負ったにも関わらず、
このタイミングで、上限引き上げが強行採決されました。
冒頭、
厚生年金保険料の負担は『労使折半』とご紹介しましたが、
今回の改定は、『企業』から相当反発があったと聞きます。
ただ、断行するより、『選択の余地』が無かったのですね。
しかし、
当然の話、該当者の少ない『上限引上げ』だけでの対応は不可能で、
近い将来、『保険料率』自体の引上げは、再スタートするでしょう。
これまでも、
公式ブログを通じて、何度もお伝えしてきたことですが、
日本の公的年金システムは『延命措置』をしているだけ。
『根本的問題』の解決は、何1つ為されていません。
既存の『社会保障システム』を考慮したライフプランは、
2020年以降の時代、全く意味を為さないと考えます。
大変な状況ですが、一人一人が、当事者意識で考える必要があります。
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代表 井上耕太