今日のテーマは、『少しずつ、市場から聞こえ始めた警鐘』です。
つい先日の公式ブログ記事で、
いつかは崩壊してしまう『禁じ手』の話をしました。
現在、
日本銀行が『年間6兆円』というハイペースでETFを購入しており、
その行動こそが、日本市場の堅調な株価を『下支え』している、と。
一時は、日本の大手企業の3分の1の割合で、
日本銀行が『筆頭株主』になるではないかと言われたほどです。
これが、
経済的に『真っ当な手法』で、未来永劫続けば問題ないのですが、
言わば『上げ底』している状況ですから、普通に考えてもそうはいきません。
日本銀行の購入原資も無限では決してないですし、
もしまだまだ余裕があったとしても、
それらを解消しなければ、将来的な『行き詰まり』は必ずやって来ます。
気候も、市場も、穏やかな陽気が続いていますが、
『山の天気』と同様に、突然、変化してしまう事を頭に置いておかなければいけません。
日本に限らず、世界マーケット全体においても、
市場からの『警鐘』は少しずつ聞こえて来るようになりました。
日経平均が上昇し、米国金利も上昇を続ける中で、
原油価格までもが上昇する『蜜月』という現象が起こり始めました。
通常、
この3者は『逆相関』になることが多く、
3指標が揃って上昇するこの傾向は、市場参加者の『加熱』『楽観視』を意味します。
少しだけ説明を加えると、
『米国の金利』が上昇すれば、短期的には『ドル高』になりやすく、
(*中長期的には、この『歪み』が調整され反対のドル安になる。)
そうなれば、世界市場でドル決済されている『原油価格』は下がります。
また、
『原油価格』が上昇すると、経済のあらゆる物価に影響しますから、
景気循環の減速が懸念され、『株安』傾向にふれる場面が多いのです。
つまり、
普段は『非対称』のように変動する2つ(以上)の指標が、
揃って上昇を見せるという事は、市場がそれだけ『浮かれ気味』だという事。
このような状況の後には『リセッション(調整局面)』を迎えることが多く、
直近では世界経済全体の『回復期』として捉えられる2016年、
そして、リーマンショック前の2005年〜2006年が挙げられます。
一時期、
1バレル20ドル半ばまで下落し、産油国を破綻の危機まで追いやった『原油価格』も、
最盛期の超えとはいかないまでも、『1バレル当たり70ドル超』まで回復して来ました。
価格上昇の背景には政治的な問題もありますが、
それでも、歴史的に見て、高値水準まで戻しつつあるという見方が出来ます。
また、
2007年に顕在化した『サブプライム・ショック』までとはいかないまでも、
米国住宅ローン債券市場にも、新たな『サブプライム』問題が発生しているようです。
『住宅(マイホーム)』に対する人の執着は凄まじく、
稀に、保有資産が1000万円もないにも関わらず、
『マイホームが欲しい!』と仰る方に出会うことがあります。
(*実際は、100万円すら保有していない方も!?)
これは、
私から見て、経済的な『自殺行為』に他なりませんが、
時代は変われど、人は全く勉強せず、同じ過ちを延々と繰り返します。
そして、
その傾向は国境・人種も超えて、日本人であっても、米国人でも同じようですね。
サブプライム層向け『住宅ローン』に関連する債券は、
現在の米国では『信用リスク移転証券(CRT)』と呼ばれています。
(*対象ローンには『政府保証』が付いていないものの、)
借り手は『ファニーメイ』と『フレディマック』が定める最低基準を満たし、
また、借り手の『デフォルトリスク(債務不履行)』も証券に内包されています。
ここまで、OKですね??
言わば『最低レベルの信用』で融資されるこの住宅ローンですが、
その『信用力』は、需要と金融機関の引き受け次第で低下することがあり得るようです。
『需要』と『金融機関の引き受け次第』、、、、非常に怪しい臭いがして来ますよね(笑)
要は、
数学的に『解明不能なパラメータ』が2つも入り込んでしまい、
この状況では、『信用度』の操作は簡単に出来てしまいます。
『そんな事、起こり得るのか??』と疑問を持たれる方々は、
『THE BIG SHORT(邦題:マネー・ショート)』という映画を見てください。
『CRT証券』市場は現在500億ドル(約5兆5100億円)前後と言われており、
米国債券市場全体から見たら、その割合は『0.1%』を少し超えた辺りの値です。
しかし、
この債券が内包する住宅ローンの借り手の『質』が低下し続ければ、
『ショック』の再来もありうると、現在、少しずつ懸念が高まっています。
その他、
日本、米国、欧州といった先進諸国だけでなく、
途上国諸国の経済状況も、近年は急速に悪化している模様。
米国は今後も金利を上昇していくことが予想されますが、
世界各国がそれに追随できなければ、相対的に『米ドル』は上昇。
途上国諸国の経済の3分の2ほどは『米ドル』建てで行われており、
『ドル高』傾向が続くと、それは国の経済にそのまま直結します。
また、
『成長鈍化』『対外債務の上昇』『商品相場ブームの終焉』等、
各国問題を抱えているようで、何が『きっかけ』となり、
次の『調整局面』がやって来るのかはわかりません。
ただし、
その時期は、私たちが想像しているよりも『近い将来』かも知れない。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太