今日のテーマは、『経済財政白書が推奨する、高齢者の保有資産の有効活用に感じる違和感』です。
先月(8月)、今年の経済財政白書が公表されましたね。
これは、
金融政策の検討、また立案する際に役立てるとの目的で、
内閣府が日本経済の分析を行い年1回公表するものです。
2024年版では、
経済の成長を阻む要因としての人手不足の克服に加えて、
国民保有資産の有効活用が課題として挙げられています。
特に、
65歳以上の高齢者に対して、過度に貯め込むことなく、
効果的な消費活動・資産運用に回すことを推奨している。
果たして、これは正しいアドバイスと言えるでしょうか。
少しだけ数字を整理すると、
日本国内にある金融資産と実物資産の総額は1京円超で、
負債を差し引く家計の純資産は2000兆円に迫ります。
そのうち、
半分を占める約1000兆円が現預金で保有されており、
言わずもがな、その保有は高齢者に大きく偏っています。
実際、
世帯の保有資産は年齢とともに上昇していく傾向にあり、
一般的な定年直後の60ー64歳の年齢層で最大化する。
この年代が保有する金融資産は平均約1800万円です。
ただし、
65歳以降の取り崩しペースは意外に緩やかと見られて、
85歳以上が保有する金融資産の平均は約1500万円。
単純計算で300万円しか減っていないということです。
そこで、
前述の経済財政白書では、過度の貯め込み過ぎをやめて、
積極的に消費活動・資産運用するように呼び掛けている。
結論から言うと、
ファイナンシャル・プランナーとして、65歳を超える、
高齢顧客に対してそんなリスクの高い提案は出来ません。
仮に、
65歳で純資産が1800万円『しか』ないのであれば、
働くことを継続して可能な限り取り崩しを先延ばしする。
白書が触れる通り、
85歳までの取り崩し額を300万円で留められるなら、
人生100年時代を逃げ切れる可能性も十分にあります。
もしも、
金融資産を全て『現金』として保有しているのであれば、
要らぬことはせず、それをそのまま保有するよう勧める。
何故なら、
原則として、利益の数字が確定している債券運用ですら、
65歳以降のスタートでは回収にリスクを伴うからです。
それ故、
『金利』という経済の基本と言える果実を放棄してでも、
リスクを排除して『安全策』を選択するしかありません。
資産形成の勝負は、65歳を迎えるまでに決着している。
人生が晩年に近付いて、劣勢を強いられている状況から、
逆転を実現することは不可能と理解することが大切です。
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昨年(2023年)よりセミリタイア生活に入っており、
今後の主催セミナー(オープン形式)の開催は未定です。
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井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太