今日のテーマは、『私たちのライフプランは物価連動債により解決することが出来るのか』です。
先週半ばの記事では、
『私達は投資依存症を克服する必要があるか』と題して、
大半の国民にとって投資が不可欠な理由を紹介しました。
その中で、
『物価連動債』という言葉を使ったのですが、意外にも、
その後、周囲の方々から質問を受ける場面が重なった為、
テーマとして取り上げて補足の説明をしたいと思います。
約10年前、
海外投資の草分けとされる専門家(グループ)が著書で、
大多数の『一般的な日本人』の資産形成の解決法として、
それを紹介したことで界隈では注目を集める存在でした。
と言っても、
一般的な日本人の認知率は余裕で1%未満と想像する為、
基本情報から振り返って、簡単に説明したいと考えます。
例えば、
額面100万円・表面利率2%の普通国債があったとき、
この債券を100万円分保有するなら、償還までの期間、
年間2万円の利子を受け取り最後に元本が償還されます。
(*簡略化のため、利子は税引き前で記載しています。)
しかし、
物価連動債はその名の通りコアCPI(*)の変動により、
表面利率は不変ながら、償還額は増減する可能性がある。
(*生鮮食品を除いた全国消費者物価指数の総合指数。)
2004年3月、
日本においても第1回債の発行により歴史がスタートし、
サブプライム危機による一時的な発行中断を経ながらも、
2013年10月より、発行を再開した経緯があります。
さらに、
2015年1月から個人投資家の保有が解禁されており、
明るい方々を中心に当時はそれなりに話題になりました。
先の説明では、
償還までの期間に消費者物価指数が下落した場合、必然、
影響を受けて利子・償還金額も減ることになりますよね。
しかし、
2013年発行分からは額面金額が最低保証されており、
物価上昇時のみ増額されるという仕組みになっています。
こう聞くと、
投資家のリスクは排除された、メリットしか存在しない、
現代に蘇った『錬金術』のように聞こえてしまいますね。
果たして、本当にそのようなことが成立するでしょうか。
ご存知のように、
投資の世界に『絶対儲かる仕組み』など存在しておらず、
話題として取り上げる物価連動債も例外ではありません。
例えば、
額面100万円・表面利率2%の物価連動債があった時、
当然ですが市場の取引価格は100万円ではありません。
一般的な債券同様、
市場参加者からのニーズが高ければ取引価格は上昇して、
反対に誰も見向きもしなければ額面金額を割り込みます。
仮に、
前者(ニーズが高い:物価上昇想定が多数派)だった時、
額面100万円に対して108万円の値がつく事もザラ。
そうなると、
10年間で平均1%未満の物価上昇ではマイナスとなり、
単純な数字の評価として損をしてしまうことになります。
仮に、
日本政府が掲げる物価目標・年2%が実現したとしても、
10年保有のリターン総額は15万円ほどに留まります。
皆さんがお好きな『FIRE』などは遠く儚い夢ですよね。
今更ですが、
投資のリスク・リターンは、原則として相関関係にあり、
適切なリスクを取る事なくなく相応の利益は得られない。
物価連動債では、私たちのライフプランは解決しません。
リスクをすべて排除した錬金術などは存在しないのです。
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昨年(2023年)よりセミリタイア生活に入っており、
今後の主催セミナー(オープン形式)の開催は未定です。
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井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太