今日のテーマは、『2040年、日本国内で時給5000円を超える時代は本当に訪れるのか』です。
先週末、経済産業省から近く、2040年に向けた日本の成長シナリオが公表される予定であることが某メディアにより報じられました。
具体策(?)としては、官民連携で社会全体のデジタル化や経済安全保障などの戦略分野に資金を投入して、2040年を目標に国内投資を倍増の200兆円規模に持っていくのだとか。
これにより、直近600兆円前後の水準で推移しているGDP(国内総生産)を、約1.8倍に相当する1000兆円規模にまで拡大することが可能だと言います。
前述の国内投資200兆円を達成するには、国内企業は年平均4%ペースで設備投資を増やす必要があり、実現すれば名目GDPは年平均3.1%ペースで増加すると試算。
また、労働生産性の向上により名目賃金が年平均3.3%ペースで増加することが期待でき、時給換算で5000円超を実現する夢のような世界(?)が到来することになります。
今後は、より詳細な成長シナリオを描くため有識者会議をするほか、成長投資を後押しするために必要な法人税改革を骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)に盛り込む予定です。
果たして、私たち日本人は『桃源郷』に辿り着けるのでしょうか。
恐らく、大半の方々が感じられている通り、冒頭でご紹介したシナリオ(成長戦略)が実現する可能性は極めて低いです。
第二次大戦下の大本営発表よろしく、残念ながら、昔から日本は大きな『フロシキ』を広げることに慣れ切ってしまっています。
過去には、小泉純一郎政権下の2001年にPB(基礎的財政収支)の黒字化を目標に掲げましたが、ゴールとされていた2025年度に突入した今、その実現を信じる人は存在しません。
ご存知の通り、21世紀がスタートしてから直近四半世紀の期間、日本の財政は健全化するどころか一貫して悪化しており、累積債務は天文学的な規模に膨れ上がっています。
前述したプライマリー・バランス(基礎的財政収支)を黒字化するどころか、フラット(均衡)に持っていくための目処すら立っていないのが現実です。
幸いなことに(?)経済省はじめ日本政府が提唱するシナリオに楽観している人はいないと思いますが、厳しい時代を生きることになる私たちは、可能な限り『淡い期待』を持たないほうが良い。
これからの時代、決して『神風』は吹きません。
私たち日本人は冷静に現実を見ることで、個々に建設的な対策を講じることが求められています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太