今日のテーマは、『カモにならないための第一歩は、常に自らの頭で思考し続けること』です。
先日の公式ブログでは『ポーカーをして、誰がカモか分からなければそれはあなた自身である』と題して、世の中には『初心者向けの投資商品』なるものが存在しないことをご紹介しました。
これは事実です。
それではなぜこのフレーズ(初心者向け)が蔓延しているかと言うと、魑魅魍魎が跋扈する世界において、それが『カモ』を判別する最も簡単で有効な方法のひとつとして機能しているから。
もちろん、世間の大多数の方々が金融・経済とは異なる分野を専門に持ち、日々、それぞれのお仕事に懸命に取り組まれていることは理解しているつもりです。
しかし、誰しも『お金』を無視して生きていくことが不可能なことも真実で、所属する業界・置かれた立場に関係なく、最低限の『知識武装』をしておくことは避けられません。
また、正しい知識・情報を得た上で、常に自ら思考し続けるというスタンスも大切ですね。
タイトルにある『カモ』という言葉は鋭く響きますが、それは、近年メディアを賑わせている『特殊詐欺』の被害者になるといったような特別なことを意味する訳ではありません。
むしろ、そのような事案(特殊詐欺 etc.)よりも、一般的には『合法』とされている金融機関(銀行・保険・証券等)の仕掛ける詐欺の犠牲者のほうが世の中には何万倍も存在しているのが実情です。
例えば、先日も次のような報道を目にしました。
某・大手損保が、業界初となる『不登校』のお子さんを抱える家庭を対象に保険金(10万円)を支給する新商品を今春リリースしたというもの。
開発担当者の談によると、きっかけとなったのは身近に不登校のお子さんを抱える家庭が存在したことと、自身のお子さんの同級生にもクラス毎に普通に数名の不登校者がいることを知ったこと。
仮にそのような状況(自身の子どもが不登校)になったとすれば、両親の仕事が制限されてしまうのはもちろん、そのほか様々な経済的損失を被ることが予想されます。
そのリスクに対して年間1000円程度の保険料を支払えば、文部科学省が定める不登校の定義(*)に該当するようなことがあった際に保険金として10万円が支給されるのだと言います。
(*病気や経済的な理由以外で年間30日以上欠席した状態。)
当然ながら現在は『任意』の制度ですが、将来的には、全国すべての自治体がこの保険に加入して、任意保険ではなくなることが理想(目標)だと語られていました。
もしも、ここまでの話を聞いて好意的な印象を抱いているとしたら、あなたは間違いなく『カモ』だと断言できます。
予めお断りすると、私自身は『不登校』について善・悪を語るつもりはさらさらなく、また、子どもを持つ親としてそれが対岸の火事(他人ごと)だと考えている訳では決してありません。
実際、不登校30万人時代と言われる昨今、文科省の調査では該当者は34万人に達することが判明しています。
これを、同じく文部科学省の調査による母数(小学生:約605万人、中学生:約317万人)で割ると、実に全体の約3.7%に相当する子どもたちが年間30日以上欠席している現実があるのです。
*繰り返しますが、その善・悪は論じません。個人的には、選択肢として『有り』だと感じています。
しかし、少しでも確率計算ができる人は理解される通り、金融商品として判断した時、この保険の期待リターンはわずか3,700円ほど(保険金10万円 * 該当確率3.7%)に過ぎません。
それに対して年間約1000円の保険料を支払い続ける訳ですから、4年間支払ってくれれば経費も含めて収支はトントン、5年目以降は保険会社が丸々儲けられる『ドル箱商品』として設計されています。
開発担当者(保険会社?)が語る、全国すべての自治体での強制加入など『トンデモ論』ですよね。
もしそのような『税金』が新設されるようなことがあれば世も末、賢明な人間から率先して、日本国外に移住していく人たちが続出するようになるだろうと想像します。
『カモ』にならないための第一歩は、常に自らの頭で思考し続けること。
それを習慣化することが、最も費用対効果の高い方法であることは疑う余地などありません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太