今日のテーマは、『神様・バフェットの痛烈な皮肉を、あなたは本当に理解していますか』です。
先日、所用で銀行に行き窓口で順番待ちをしていた際、ある不思議な場面を目にした、と言うか正確に表現すると『遭遇』しました。
なぜ言い直したかというと、ブースから漏れ聞こえてくる声を聞いていたので、実際に『見た』という訳ではないから。
その場面とは、声の感じから60歳以上と思しき男性が、40代ー50代と思しき女性の銀行員から『資産運用』についてのレクチャーを受けているというものです。
果たして、皆さんはこの光景の奇妙さが瞬時に理解できるでしょうか。
もちろん、銀行サイドもボランティア活動をしている訳ではありませんから、前述の男性に対して『この人の金融リテラシーを上げてあげたい!』などと純粋に想っているわけではありません。
それでは、なぜ時間を割いて個別ブースで話をしているかと言うと、該当の男性がまとまった資産を保有しており、資産運用に動いてもらうことで銀行サイドは手数料を得るチャンスが生まれるから。
恐らく、話しぶりからして男性は経営者ではないですが、いわゆる大企業に勤め上げた功績から数千万円ー1億円程度の資産を保有していることは容易に想像がつきました。
世界標準の『富裕層』には該当しないものの、現代の日本基準では『上位層』に属していますよね。
しかし、失礼ながら、対応している女性行員にそこまでの資産があるとは到底思えず、話している内容から考えても、決して『金融に詳しい』とは言い難いことが判断できました。
にも関わらず、該当の男性は女性行員の話に熱心に耳を傾けており、言われるがままにアクション(銀行サイドが斡旋する投資信託を購入)しようとしているのです。
ここで自身の順番が来たので結末は不明ですが、彼は一般レベルとしては上位に属する資産を保有しながら、残念なことに銀行サイドに『カモ』られてしまったのではないかと想像しています。
ジム・ロジャーズ、ジョージ・ソロスと共に投資の神様と称されるウォーレン・バフェットは、故郷・ネブラスカ州に自らの拠点を置き、NY・ウォール街から距離を取ることで知られています。
彼を表す『オマハの賢人』という異名も、投資に明るい人たちには広く知られていますよね。
自身が金融の本拠地・ウォール街から距離を取る理由を、バフェット氏は次のような『痛烈な皮肉』で表現しています。
『(NY・ウォール街とは)ロールスロイスで乗り付けてくる人たちが、地下鉄で通勤する人たちにアドバイスを求める唯一の場所』
本来であれば立場は完全に逆転しているはずなのに、『お金』の魔力に幻惑された世界では、通常の世界では起こりえない摩訶不思議なことが普通に起こり得てしまう。
冷静な視点を持ち、正しい判断をするためには、ウォール街に近付いてはならないのだと。
もし仮に、あなたがある『スポーツ』を競技しているとして、自身のプレーを上達させたいのであれば、アドバイスを求める人物はその競技を『上手にプレー出来る人』にしなければなりません。
資産形成(投資)もそれと同様で『誰にアドバイスを求めるか』という最重要ポイントを、決して忘れてはいけないのです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太