今日のテーマは、『通貨発行権を持つ国家は、どれだけ借金をしてもデフォルトしないは真実か』です。
先日の公式ブログでは『上昇する国債利回り、サブプライム・ショック以来の高水準は何を意味するか』と題して、調整機能がマスキングされたうえで金利が上昇する国債のリスクをご紹介しました。
少しだけ振り返ると、それ(金利上昇)は債券市場で日本国債が売り優勢にあることを意味します。
冷静に考えれば当然で、信用格付こそギリギリ『Aランク』が与えられていると言えど、デフォルト(債務不履行)リスクが少なからずあり、それに見合う利回りがない債券など誰も欲しがりません。
私自身、資産形成(投資)をスタートした20年ほど前から日本国債に対する見立てはネガティブで、これまで自身のポートフォリオに組み込んだ経験がないというのが実際です。
もし仮にこれから40年ほど生きることが出来たとして、一生涯のうちでそれ(日本国債)に関する経済的有事は必ず経験することになるだろうとも想像しています。
このように話題を展開すると、近年流行するMMT(現代貨幣理論)信者たちから反論が出てきそうですよね。
知らない方々のために少しだけ補足すると、MMT(現代貨幣理論)とは通貨発行権をもつ政府・中央銀行は自国通貨建で国債発行する限り、どれだけ債務を積み上げてもデフォルトしないという考え方。
果たして、そのようなネバー・ランド(桃源郷)は本当に存在するのでしょうか。
彼ら・彼女らがそれを信仰する根拠を、日本の事例で幾つか列挙してみましょう。
①日本国債は、主に日銀や金融機関により約90%が国内消化(保有)されており、海外への依存度が低く、国債市場の変動に影響を受けにくいため債務としての安定性が担保されている。
②債務は自国通貨(日本円)建で発行されており、外貨(主に米ドル)の準備不足によるデフォルト・リスクに関してはほぼないと言える。
③日本は昨年末時点で500兆円を超える世界トップクラスの対外純資産を有しており、海外諸国からみた時、国家としての信用力・安定性が担保されている。
④2025年3月末時点で家計金融資産は2200兆円に迫っており(日銀調査統計局)、累積債務を上回っているほか、これからの国債購入原資としてもまだまだ余力がある。
もしかしたら、これらの4項目は一般の方々にとって説得力あるものなのかも知れません。
しかし、金融・経済の知識を少しでも持っている人たちからすればツッコミどころ満載で、とてもじゃないですが、日本が財政的に安泰だと考えることなど出来ません。
例えば、①については後半部分は合っているかも知れませんが、大部分が国内保有されているからと言っても期限を迎えたら償還(返済)するという債券の原則は外されません。
②についても為替リスクから解放されることは事実ですが、発展途上にある小国でない限り、そのリスクはそもそも償還リスクと比べると微々たるものです。
③については、仮に対外純資産を換金して自らの手元に戻してこれたとして、それをすべて返済に充当しても半分以上の債務(国としての借金)は残ることになる。
最終項目(④)は冷静に考えると恐ろしい話で、累積債務の帳消しに家計金融資産を充当するという方法は国家サイドに都合が良くても、やられる側の国民サイドにとってはたまったものではありません。
ここで断っておくと、日本をはじめ国家は寿命が存在しない(若しくは個人・企業と比較して相当長い)ため、完全なる『無借金経営』が理想形であるなどとは考えていません。
しかし、だからと言って無尽蔵に借金を積み上げても良いわけがなく、例外はなく、ツケは必ず支払うときがやって来ます。
恐らく、100年後には『事実』として証明されていると想像しますが、MMT(現代貨幣理論)は机上の空論に終わると考えています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太