今日のテーマは、『中国・ポップマートの株価急落に見る流行りものに手を出すことの危うさ』です。
今月(9月)に入り、香港の株式市場では中国の玩具メーカーであるポップマート・インターナショナルの株価が急落していることが度々注目を集めています。
同社の名前にピンと来ない方々でも、もしかしたら、人気キャラクター『LABUBU:ラブブ』の製造メーカーと聞けば分かる人たちもいるのかも知れませんね。
恥ずかしながら、私自身、半年ほど前に顧客の社長さんに教えて頂くまで知りませんでしたが、海外セレブや著名人が愛用したことで、若い女性たちを中心に爆発的な人気を誇っているフィギアです。
その当時、日本国内では絶対に入手できないと言われて香港中を散々探し回りましたが、結局、現地でも売り場に陳列された実物にお目にかかることはありませんでした。
日本に帰国してから街行く人たちを観察してみると、なるほど、若い女性たちがアクセサリーとして身に付けている場面が散見されることに気付きます。
特に、いわゆる夜のお店(大阪で言えば北新地)で働く女性たちが、自身のエルメスやシャネルのバックにこれ見よがしに付けていたのが印象的でした。
話を戻すと、主力商品・ラブブの人気が陰りを見せ始めたことの影響を受けてか、ポップマート・インターナショナルの株価も今月に入り急降下しています。
同社の株価は、先月(8月)26日付で『335.40香港ドル』の過去最高値を記録しましたが、この記事を執筆する9月29日時点で『261.80香港ドル』まで約22%もの大幅下落。
わずか1ヶ月ほどの期間で時価総額のおよそ4分の1、日本円に換算して『約2兆円』の株式価値が吹き飛んだ計算になります。
ただし、同社の株価が年初は『90香港ドル』付近で推移していたことを考慮すると、現在の株価は約3倍の水準にあり、まだまだ割高感があることは否めません。
事実、JPモルガンのアナリストは『現在の株価は(業績が)完璧な状態を織り込んでおり、業績の下ぶれやネガティブな情報が株価下落に繋がる可能性がある』と評しています。
つまり、市場はまだまだ楽観的で、同社に対して少しでもネガティブに映る情報が出てくれば、それがトリガー(引き金)となり、いつ株価の大幅下落が起きてもおかしくないということです。
もちろん、マクロ経済と同様、個別銘柄の株価においても完璧な未来を見通すことは出来ませんが、一つだけ確実なことは、流行りもの(ラブブ)の人気はいつか必ず衰えて終焉するということ。
株式市場のバブルと同様に『流行』はそのど真ん中にいる間は熱狂・高揚感に気付きませんが、それが過ぎ去ってしまうと急激に陳腐化して、劇的なダサさを感じることになります。
こと投資に関しては、『流行りもの』に手を出してはいけないことは鉄則です。
もし手を出す(保有する・株式を取得する)としても、その投資対象が世間から十分な市民権を得て、恒常的な価値を持つ可能性が高まってからでも決して遅くないと感じています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太