今日のテーマは、『日米の金利差が大幅縮小したにも関わらず、円安が解消されないジレンマ』です。
18日ー19日の2日間、年内最後となる金融政策決定会合が開催されていますが、日銀は早々に政策金利を0.25%『利上げ』することを決定しました。
と言っても、このことを市場は既に折り込み済みのため、速報がマーケットに与える影響はほぼゼロとなっています。
今回の決定により、日本の政策金利は0.75%まで引き上げられることになり、ゼロ金利の呪縛に囚われていた日銀・黒田政権下を挟んで、実に30年ぶりの水準にまで高められました。
今月9日ー10日、日本に先行して開催されたFOMCで米国は0.25%の『利下げ』を決定しており、奇しくも、両国の金融政策は金利の観点において相反する動きをしていることになります。
ただ、本来、各国の政策金利はそれぞれの経済情勢を考慮して独立して決定して良いわけで、覇権国(米国)に同調していないこと自体は大きな問題ではないのかも知れません。
*それでも、2000年以降、欧米から乖離して日本は独歩する傾向が強くあり、もう少しだけ主要先進国と足並みを揃えて欲しいと感じる場面もありますが。
しかし、コロナ禍まっただ中の数年前とは正反対の展開になりつつある中で、私たち日本人を継続的に悩ませているものがあるとすれば、それは空前の円安傾向(?)にある為替レートです。
少しだけ過去を振り返ると、『有事の日本円』なる神話が成立していたサブプライム危機直後、米ドル・日本円のレートは80円台で推移して、遂には75円32銭の最高値を記録しました。
その後も2010年代前半は対米ドルで100円を割り込む円高の時代が続きましたが、この時は、まさか10年後に名目上であれその価値が半値まで暴落するとは誰も想像していませんでしたよね。
時は流れて、2020年以降の5年間は日本円にとって激動の時代となり、主要国通貨の中で一人負けの様相を呈して(一時的な例外を除いて)対米ドル150円超の水準にあることが常態化しています。
不思議なもので、デフレこそが悪とされていた時代は『救世主』になると目されていたものが、実際に登場してみると一瞬のうちに『悪者』のレッテルを貼られるようになってしまいました。
そして、日米の金利差が縮小すれば解消すると見られていた空前の円安(?)は、それが実現されても大きく変動することはなく、これまで信じられてきたロジックが破綻しつつあります。
実際、一時期5%近かった日米・両者の金利差は、現時点3%ほど(米国3.50ー3.75% / 日本0.75%)まで縮小していますが、為替は対米ドルで155円を超える水準を推移しています。
これほど無視できないレベルの環境変化がありながら為替水準がほぼ不変ということは、今後も同様の傾向が続いていくと考える方が自然なのではないでしょうか。
要は、突き詰めれば日本円が売られて(ニーズが低く)米ドルが買われている(ニーズが高い)ということですが、社会全体としてそれが『デフォルト設定』とされる時代が到来しています。
それは、大企業を中心に海外事業の強化が加速したことで決済通貨としての米ドル需要が高まったことに加えて、初心者投資家の大部分がオルカン・ファンドに殺到していることも一因かも知れませんね。
サブプライム危機直後の対米ドル100円切りはもちろん、それが100円台前半で推移する時代も、もはや訪れることはないとの見方が強まってきました。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太





