今日のテーマは、『ケビン・ウォーシュ新議長の誕生により、米経済はより良い方向へ向かうのか』です。
昨日の公式ブログでは『株式市場に暴落が訪れたとき、安全資産としての有事の金は機能するか』と題して、FRB次期議長の決定が金相場急落の1つのトリガー(引き金)として作用したことをご紹介しました。
記事中では、今回の金市場のバブル形成にミセス・チョウ(中国人・個人投資家の仮称)の存在が大きく関与していると触れましたが、大元を辿れば市場がリスク回避的に動いたことに帰結します。
今後、どのタイミングで、何がきっかけとなり株式市場の暴落が始まるかは分かりませんが、漠然としたものも含めて様々なリスクを多くの人たちが感じ取り『安全資産』を購入していたということです。
ただ裏を返せば、金価格が下落したという現象はリスクが和らいだ(と解釈された)ことを意味しており、その点で考えれば、ケビン・ウォーシュ新FRB議長は市場から歓迎されたように映ります。
ここで、少しだけ情報を整理しながら進めましょう。
今回の選定で有力候補とされたのは、国家経済会議委員長を務めるケビン・ハセット氏、FRB元理事のケビン・ウォーシュ氏、FRB現理事のクリストファー・ウォラー氏、米投資大手ブラック・ロックで役員を務めるリック・リーダー氏の4名です。
この内、最初の3名は昨年9月にトランプ氏自らが次期議長の候補者として名前を挙げており、リック・リーダー氏は昨年末の12月にベッセント財務長官から候補者に加えられたという経緯があります。
先月30日の正式決定まで米メディア・市場の予想は大きく揺れ続けて、米・大手賭けサイトの予測順位は年明けからの僅かな期間でハセット氏→ウォーシュ氏→リーダー氏と首位が入れ替わります。
そして、最終的にはケビン・ウォーシュ氏に決定された訳ですが、今後は5月のパウエル現議長の退任を待ち(*)、先ずは一つの区切りである任期4年間の政権運営(舵取り)に挑むことになります。
*現在、パウエル氏は現職議長としては異例の刑事捜査を受けており、トランプ政権を痛烈に批判して攻防が繰り返されていますが、本題とは逸れてしまうためここではその詳細に触れません。
ウォーシュ氏の人物について簡単に紹介すると、現在55歳で米・投資大手のモルガン・スタンレー出身、遡ること四半世紀前のブッシュ政権下ではNEC(米・国家経済会議)事務局長を務めた言わばエリートです。
その後、2006年に史上最年少の35歳でFRB理事に就任すると、直後に起きたサブプライム危機ではFRBとウォール街とのパイプ役として活躍します。
しかし、『ばら撒き・バーナンキ』の異名を持つ当時のFRB議長ベン・バーナンキ氏とは反りが合わず、同氏が推し進めた大規模QE(量的緩和)に懸念を強めて早々に理事を辞任したという過去があります。
今回の新議長決定を市場がポジティブに捉えた一つの要因は、FRB(米連邦準備理事会)の独立性が保たれることに対して期待感が広まったこと。
冒頭に挙げた4候補のうち、親トランプ派と見られるケビン・ハセット氏が新議長に就任すれば、FRBの独立性は失われ、トランプ氏に私物化されるのではという懸念を多くの人たちが抱いていました。
ウォーシュ氏の場合はトランプ氏と一定の距離感があり、政策金利の利下げに対して肯定派ながら、無秩序な金融緩和に対しては消極的な『タカ派』というスタンスをとっています。
その分、11月に実施される中間選挙に向けてトランプ政権との攻防も予想されていますが、異なる意見をぶつけ合いながら最適解を求めていくのは、金融・経済に限らず自然界全体の真理です。
果たして、米国の経済は新議長・ウォーシュ政権下でより良い方向へと向かっていくのか。
同氏にとっては就任直後から難しい舵取りになりますが、今後の動向に注目が集まります。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太





