今日のテーマは、『静かに押された金利上昇のスイッチ』です。
ここ数年間、日本市場だけに限らず、
世界マーケットが異常な『低金利』の時代にあった事はお気付きだと思います。
特に、
欧州の一部の国に続き、日本でも『マイナス金利』が導入されてから、
その傾向は一層強くまり、歴史的にも類を見ない世界に入ってきました。
シンプルな話、
『金融』『経済』について詳しい知識がない方々でも、
人が『お金』を借りたら、貸し手が『利息』を要求するのは正しいと感じるでしょう。
反対サイドから見れば、
『お金』を借りる側は、『利息』を付けて返済する事で、
融資者に対して、資金活用の『機会損失』を補填する形となります。
勿論、『債務者』が返済能力が高い(収入・信用etc.)場合、
それが低い人間と比較して、その補填する『お金(利息)』は小さくなります。
『債権者』が抱えるリスクは、『債務者』により異なるので、
それが『融資利率』に反映される形で、取引が成立するのです。
ここまで、OKですね。
ここでしっかりと認識しておかなければいけない事は、
『債務者』の返済能力云々に関わらず、
『債権者』に対する利息は、必ず『プラス』で発生するいう事。
考えて見れば『当たり前』で、
他人に『お金』を融資しているにも関わらず、
『債権者』が何も見返りを求めない(ゼロ金利融資)のはおかしい状況です。
*個人間の相対取引で、今までの人生において、
何か、圧倒的な『恩義』を相手に受けていた場合は別ですが。
勿論、融資利率が『マイナス』になる自体など、正気の沙汰とは思えません。
(*融資したサイドの人間が、金額的に損をするという状況です。)
しかし、
上記のような『異常事態』が、実際に、ここ数年間起こっていたんですね。
『住宅ローン』等で金融機関の融資サービスを利用された方はわかるでしょうが、
『30年間』を超える(超)長期融資も、1%を切る低利率で実行されていました。
更に、
『長期金利』の基準となる『10年もの新発国債』も、
特に象徴的な時点で、2016年7月29日には『▲0.195%』を記録しています。
先ほどご紹介した、
『債権者が損をする』という異常事態が、
つい2年ほど前、『現代日本』においても、実際に起こっていたんですね。
流石に、
日銀の過度な『金利コントロール』は緩和されつつあり、
この金利(10年新発国債)も、現在では『+0.125%』程度まで戻ってきています。
しかし、
『信用格付け』『過去のデフォルト実績』から考えて、
この値もまだまだ十分コントロールされた『低金利』で、
海外諸国の国債利回りと比較して『違和感』を覚えます。
ご存知の方もいらっしゃいますが、
現在の日本は『日本銀行』が相当額の『国債買い入れ』を公言しており、
その『実質(信用リスク)』より『利回り』が極低率に制御されています。
前述の『国債マイナス金利』という異常事態も、
実は、この買入れスキームを公言していたことで実現したものでした。
確かに、
『日本銀行』が保有する資産が無尽蔵に増殖していき、
永遠に『国債買入れ』が可能ならば、その戦略も取り続けることが出来ます。
しかし、
賢明な皆さんもお分かりのように、現実世界でそのような事は起こり得ず、
日銀と言えど保有資産に限りは有り、買入れ不可になる時はやって来ます。
そして、その時は、刻一刻と近付きつつあるのです。
本日(9月21日)日銀は、金融緩和策の実施手段の1つとして実行中の、
『超長期国債』の買い入れ規模を縮小することを発表しました。
具体的には、
残存期間が『25年』を超える『超長期国債』の買入れ金額を、
前回から『100億円』規模縮小し、『500億円』にすると通知したのです。
この動きを受けて、市場では、
緩やかな『金利上昇』を促す狙いがあるのではないかといった見方が出ています。
更に、
『40年債』の入札がある来週においても、
残存期間が『10年超25年以下』の債権購入額に減額があるのでは、と見られています。
恐らくこれは正しく、
これを機に、日本銀行は、
あらゆる残存期間の国債を、段階的に買入れ金額を減少させていく見込みです。
『飲み込んだもの』は、いつか『吐き出す』必要があり、
強行して継続していたら、それこそ『ハード・ランディング』に繋がります。
むしろ、
これまでの方が『異常事態』だった事は前述の通りで、
ここから徐々に、市場は正常な方向へと向かっていくと考えます。
『正常』と言っても、具体的には、市場の『金利』が上がるのです。
この状況で困る方々は、もちろん、『債務者』として『お金』を借りている方々。
『住宅ローン』始めあらゆる金利がじわじわと上昇し(正常化し)、
今後は、その返済に窮する方々が出てくることも大いに予想されます。
『金利上昇のスイッチ』は、静かに押されました。
市場をウォッチし、常にアンテナを張り巡らしながら、
『お金』の動きを見ていくことが、誰にとっても重要と考えます。
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