今日のテーマは、『トランプ大統領が、即座にパウエル批判をした理由』です。
昨日の公式ブログでは、
『何故、既定路線の利下げに市場は失望したのか??』と題して、
FRB『利下げ』に対して、理屈と相反する動きをした『株式市場』について話しました。
基本的に、
『政策金利』を下げることで、市場のあらゆる『金利』は下落傾向を示し、
その結果、社会全体の『経済活動』は、活性化されることが予想されます。
当然の話、
『経済』が活況に循環している時は、そのような政策を取る必要はなく、
必然、その政策を取るという事は、経済に『懸念材料』がある事を示します。
その意味では、
現在、米国株式市場の主要指数である『NYダウ工業株30種平均株価』が、
『2万7000米ドル超』と、歴史的に見て最高水準で推移している状況で、
『利下げ』を敢行するというのは、一見『不可解』な決断に見えます。
ただ、
市場参加者は、この代表的経済指標の高騰が、『虚像』の上に成り立つ事を理解し、
世界の覇権国『米国』始め、各国に『内在リスク』が多数在ることを知っています。
なので、
昨日の『政策金利0.25%利下げ』報道が出た際も、
『この程度の利下げでは、リスク顕在化時に対応不可能』と判断し、
『市場退出』の動きを見せる結果となり、『大幅下落』したのです。
しかし、
往々にして、『大幅下落』した翌日の市場では、
『リスク』を過大評価し過ぎていたと見る投資家が『買い戻し』を行い、
前日終値から反発して、その下落分を1日で取り返すケースが有ります。
昨日についても、
日本時間夜12時を回ったあたりで、一度『米国市場』をチェックすると、
『前日比:300米ドル超』と、大幅上昇して推移するのを確認しました。
ここまでは、『典型的な動き(反発)』ですよね。
それで、安心して眠りについたのですが、
今朝、起きて『終値』をチェックすると、驚かされてしまいました。
昨日の米国市場は、現地時間13時半を境として、
一気に『600米ドル』程下落し、『前日比マイナス』で取引を終えていたのです。
日々、市場動向をチェックしていたら、こういう場面も遭遇しますが、
何度経験しても、なかなか慣れるものでは有りませんね(笑)
当然、
一瞬にして『米国市場』の『本質的価値』が変化した訳では決してなく、
現地時間8月1日(木)13時半に、何かしらの発表があったと考える方が自然です。
そして、
ニュース報道をチェックしてみると、
簡単に、米国市場の『大幅下落』の理由を見つけることが出来ました。
メディアでも頻繁に報道されているので、
皆さん、きっとご覧になられましたよね。
そうです。
ドナルド・トランプ米国大統領は、昨日8月1日、
ほぼ全ての中国製品に関税を課す「対中制裁第四弾」を9月から発動すると表明しました。
もし本当に『実行』に移されれば、
新たな制裁では、関税率は『10%』に設定され、その対象額は、
合計『約3000億ドル(日本円換算:約33兆円)に上ると言われています。
これまで、
『対中制裁関税』は、第一弾『産業機械・電子部品対象:340億ドル(*)』や、
第二弾『半導体・化学製品:160億ドル』等、特定の分野に限定されていました。
*上記数字は、米国における『対中貿易額』です。
しかし、
第三弾の『家具・家電:2000億ドル(*)』から本丸に踏み込んだ感があり、
今回の第四弾は『スマートフォン・衣料品:3000億ドル』と中心分野に及び、
『米中貿易戦争』の言葉が示す通り、2国間の争いは激しさを増しています。
*上記注釈同様。
恐らく、
慢性的に『貿易赤字』を垂れ流す米国にとって、『対中貿易』はその主因であり、
それを『力技』でも早急に解決する為には、『対中制裁第4弾』は既定路線だった。
当然、
それを公表すれば、世界2大国間の貿易戦争は『経済停滞』を意味し、
市場参加者からは『ネガティブ』な反応が返ってくることは自明です。
その状況で、
そのインパクトを、幾分かでも『緩衝』する為の『利下げ要求』だった訳ですが、
トランプ大統領が期待したより、FRB発表の『利下げ率』が、想定外に低かった。
加えて、
ジェローム・パウエル議長の会見では、今後の『利下げ』見通しについても、
『長期的利下げ局面に突入するものではない』と、その継続性を示さないものでした。
この相違点、
『自分(トランプ大統領)が推し進めたい事』と『FRBの認識』のズレこそが、
『利下げ』発表後、トランプ大統領が、即座に『パウエル批判』した理由です。
もしかしたら、
事態・現実は、私たちが予想するよりも、更に『深刻』なもので、
『第5段制裁』『第6段制裁』なども、念頭にあるのかも知れません。
仕掛けているのは『米国』ですが、追い込まれているのも『米国』です。
一昨日行われた会見の席で、
パウエル議長は、『中央銀行の政府からの独立性』を記者団に説き、
今回行われた『利下げ』も、『外部(政府)圧力』の関与を否定していました。
このまま、
『米国政府』と『FRB』の認識のズレが拡大していくと、
『虚像』の上に成立している『活況』は、一気に崩壊を見せるのかも知れません。
このように、
『微妙(絶妙?)なバランス』を取り続けながら、現在の市場が形成されている事も、
私たちはしっかり認識し、『資産形成』に臨むようにしておいた方が良さそうです。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太