今日のテーマは、『欧州の大国・フランスの信用不安から窺い知る、日本のリアルな評価とは』です。
約2ヶ月前、債券市場のちょっとした波乱が関係者の注目を集めました。
欧州では、ドイツに次ぐNo.2の経済大国と目されるフランス国債の利回りが急騰して、10年もののそれが、経済的観点で劣等国とされてきた南欧諸国と逆転現象を起こしてしまったのです。
実際、現在もフランス国債10年ものの利回りは年率3.40%前後で推移しており、スペイン(年3.10%前後)、ポルトガル(年2.93%前後)、イタリア(3.35%)よりも高い水準にあります。
また、2010年代にデフォルト騒動を起こしたギリシャ国債(10年もの:年3.25%前後)にも負けている(?)状況にあり、市場からの評価が厳しいものになっているというのが現実です。
因みに、欧州の覇権国・ドイツは10年もの国債の利回りが年2.54%前後という低い水準にあり、フランスが凋落していく中、一強の地位をより盤石なものにしようとしています。
恐らく、明るい方々は理解されていると思いますが、債券における信用と利回りは相反関係にあり、デフォルト(債務不履行)リスクが小さいほど、利回りが低くても購入される可能性は高まります。
反対に、デフォルトの懸念があるものを好んで購入する物好きはいませんから、リスクが高まった債券は利回りがどれほど高まっても嫌われる傾向にあるのです。
今回、フランス国債の利回りが急騰した理由は、政治的混乱から財政再建や政権運営に疑念の目が向けられており、市場参加者がフランスに対してイエローカードを突き付けたから。
仮に、現在の水準以上にフランス国債の評価が落ちた場合、日本の投資家も少なからず影響を受けるばかりか、先日から触れている過熱相場の反転要因になる可能性すらあると見ています。
また、これまで高位をキープしてきた合計特殊出生率(女性が一生涯に生む子の人数の平均値)も低下しつつあり、死亡数が出生数を上回る、人口の自然減が視野に入ったことも無関係とは言えません。
2023年時点、フランスのそれ(合計特殊出生率)は1.66と米国(1.62)や英国(1.56)と比べて高い水準にあり、私たちが暮らす日本(1.20)よりも格段に良い状況にあるのは事実です。
しかし、これまで大部分を支えてきた移民系住民たちも、2世以降は経済不安等を理由に出産を控える傾向にあり、今後は急速に出生数が減少していくことも予想されています。
ご存知の通り、同国は20世紀に勃発した2度の世界大戦ではいずれも戦勝国サイドに属しており、直近100年間においては、経済的観点での痛手を負っていないというアドバンテージがあります。
また、EU(欧州連合)創設以降もドイツに次ぐ欧州2位の経済大国という地位を維持しており、世界全体で見ても、これまでは数少ない『勝ち組国家』として見られてきました。
そのフランスが、急転直下、ここにきて一気に信用不安に晒されています。
果たして、これはファー・ウエスト(Far West)の出来事として傍観できるのでしょうか。
因みに、我らが日本の国債は世界的格付会社から『A』の評価を受けており、今回の一連の騒動で格下げを受けたフランスのそれと同等ランクにあります。
また、先ほど触れたとおり合計特殊出生率も1.20前後で推移しており、出生数を死亡数が上回る自然減は2007年以降は19年連続、今では年間100万人に迫るペースで人口が減少しています。
直近、日本は注目を集めてはいませんが、それはフランスよりも状況が良いからではなく、元々が良くない状況だったからというのですから皮肉です。
人も国家も騒がれているうちが花。
完全にスルーされるようになってしまったら、もう既に終焉を迎えているのかも知れません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太