今日のテーマは、『人間は本質的に弱い存在だからこそ、経済的に自立することが重要になる』です。
ちょうど1ヶ月ほど前、少し考えさせられる報道を目にしました。
それは、警察官を騙って80代の高齢女性からキャッシュカードをだまし取り、口座の資金を盗み出そうとしたとして、こちらも70代の高齢男性が愛知県警に逮捕されたというもの。
これだけでも十分ショッキングな話ですが、さらに驚かされたのは、その事件から遡ること約2ヶ月前、容疑者の男性自身がまったく同じ手口で1億円を超える資金を騙し取られていたということ。
つまり、男性は自らが被害にあった詐欺グループ側から勧誘を受けて、自らも詐欺を働く側に転じて逮捕に至ったというのです。
因みに、2025年上半期(1ー6月期)警視庁が把握する特殊詐欺事件は前年比1.5倍の1万3212件も起きており、それらの被害総額は前年比2倍超の約600億円にのぼっています。
もちろん、こういう事象で表に出てくるものは氷山の一角というのが世の常ですから、日本だけで年間数千億円規模のお金が騙し取られており、もはや詐欺事件は他人事と言えない時代に突入しています。
話を戻すと、逮捕された男性は自らが被害に遭う前に少なくとも1億円を超える金融資産を保有しており、この時点で詐欺グループから勧誘を受けても、100%に近い確率で拒否していたと考えます。
しかし、(自らの詐欺被害で)虎の子の老後資金を失った途端、冷静さと理性を同時に失ってしまい、自らその苦痛を経験していたにも関わらず他人を騙すサイドに簡単に転じてしまった、、、、
被害者となってしまった男性の痛みも想像できるだけに、やはり考えさせられてしまう事件です。
私自身、デフォルト設定として、人間は本質的に『弱い存在』だと認識しています。
その弱さは、経済的・精神的・身体的に追い詰められたときほど露呈してしまい、それぞれの要素で余裕がある状態では絶対にしないであろう愚かな判断をするようになる。
そして、それは例外なくすべての人に共通した性質で、私たち一人一人の中に必ず存在しています。
これは習慣的に取り組んでいることですが、20代半ばから資産形成をスタートして、16年間をかけて経済的自由を達成するプロセスで、本質的には何を実現したかったのか振り返るようにしています。
その内観を通していつも確認していることは、豪華絢爛・贅沢な生活をしたい訳では決してなく、自らの人生のすべての要素に主導権(決定権)を持つことと、自由を獲得したかったということ。
そして、経済的基盤を築くことにより、精神的・時間的にゆとりある生活を送れるとも考えます。
それぞれ立場が異なるため厳しい人もいるかも知れませんが、人は経済的に自立する必要がある。
それは自己顕示欲を満たすという浅はかな目的ではなく、人として正しく生きていく為なのです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太