今日のテーマは、『年金問題で窮地に立つ日本が、エンジンとブレーキを同時に踏み続ける理由』です。
昨日の公式ブログでは、
『中国の年金対策で社会保障は解決するのか』と題して、
今年始動したドラスティックな改革案をご紹介しました。
と言っても、
具体的には会社員を対象とした定年年齢の引上げであり、
理屈としてはシンプルに理解できるものとなっています。
しかし、
そのシンプルさ故、国民サイドも痛みをイメージし易く、
国内では大きな反発を招いているということも現実です。
昨日の記事中、
中国の総人口に占める65歳以上人口の割合、いわゆる、
高齢化率が15%を超えたと紹介する場面がありました。
また、
国連は、同国の高齢化率が2034年に21%を突破し、
先ず確実に、超高齢者社会が到来すると予測しています。
さらに、
中国社会科学院は、そう遠くない未来の2035年にも、
日本で厚生年金に相当する原資が枯渇すると指摘します。
10年後ですから、デッド・ラインは見えていますよね。
ただし、
これらの数字を見て、勘の良い人は気付かれている通り、
私たちが暮らす日本の方がより窮地に立たされています。
先ほど、
中国の高齢化率が15%を超えていると紹介しましたが、
日本のそれ(高齢化率)はダブルスコアを付ける30%。
もちろん、
年金制度が完全に合致しないので一概には言えませんが、
中国のXデー(財源枯渇)が2035年に到来するなら、
日本の終焉は確実のそれより早く訪れることになります。
私見では、
受給開始に20年以上ある私たち世代(40代以下)は、
公的年金は、全く意味を成さなくなると予見しています。
仮に、
社会保障(年金)問題の根本的な解決を目指すのならば、
現行制度から『入』を増やして『出』を少なくすること。
具体的には、
料率アップ・対象拡大で収入(年金保険料)増大させて、
国民サイドに対する給付水準を引き下げる他ありません。
しかし、
現実世界は、全てが理屈で解決できるほど単純ではなく、
エンジンとブレーキが同時に踏まれる状況がつづきます。
先週16日、
厚生労働省は、一定収入のある高齢者の年金額を減らす、
『在職老齢年金制度』を見直すことを明らかにしました。
現行、
年金を減額する基準額(年金と給与の合計額)としては、
月額では『50万円』というラインが設定されています。
これが、
2026年4月からは『月額62万円』に引き上げられ、
範囲内であれば、年金を満額受給することも可能になる。
一方で、
年金保険料を算定する基となる標準報酬月額の上限値は、
現行の65万円から『75万円』へと引き上げられます。
つまり、
就労し続けながら、受給できる年金額がアップする一方、
高所得者に関しては、保険料の徴収額も増加するのです。
財源に余裕はありませんから仕方ないかも知れませんね。
このように、
なぜ政府がアクセルとブレーキを同時に踏むかと言うと、
21世紀は、日本の人口が急激に減少する変遷期だから。
政府サイドの本音を言えば保険料はより多く徴収したい。
しかし、
目の前の現実として、社会全体の人手不足は切実であり、
年金の減額を懸念した働き控えも避けなければならない。
その結果がジレンマに陥っている『現状』だと言えます。
日本の年金問題は非常に難しいフェーズに突入している。
この難問を解決できる人は、恐らく一人としていません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太