今日のテーマは、『経済大国であるはずの日本で、果たして日本人は豊かさを享受しているか』です。
昨日の公式ブログでは『海外投資家の攻勢を受ける今、私たち日本人が東京から追い出される日』と題して、不動産市場を舞台に、海外の富裕層・投資家マネーに翻弄される日本の現状を紹介しました。
少しだけ振り返ると、目下、東京23区内で取引される新築マンションの平均価格は1.3億円に達しており、コストプッシュ要因に加えて、需要・共有バランスが前者に傾いていることを示唆しています。
そして、その需要はもともとの居住者である日本人により喚起されている訳ではなく、1億円、2億円を超えて高額物件になるほど、購入者の外国人(国外居住者)割合は高まる傾向にあるのです。
なぜ、そのようなことが起きているのでしょうか?
理由は不動産市場のマネーゲームに日本人がついていけず、シンプルに買えなくなっているから。
そのことは、政府関係機関から定期的に公表される各種統計を見ても明らかですよね。
例えば、最も代表的な指標に給与所得者の『平均給与』がありますが、国税庁が公表したデータでは一昨年(2023年)の日本のそれは『460万円』に留まっています。
驚くべきことに、平成元年(1989年)のそれも『452万円』だったとされていますから、資本主義という経済システムを採用しておきながら、35年間の時を経て日本国内は不変だということ。
いや、正確に言えば、数字的には不変であったとしても、日本人は確実に貧しくなっていますね。
何故なら、1989年当時の社会保障負担率が10%程度だったのに対して、現在(2025年)のそれは約18%とほぼ倍増しており、額面上の支給額は同じでも手取りの金額は減少しているから。
また、国民負担率(生活全体の実際の税負担+社会保障負担)も38.4%から46.0%と8ポイント近く上昇しており、35年前と比較して平均的なサラリーマンは軒並み苦しい生活を強いられます。
さらに、より実態に即した年収の中央値は『410万円』ほどになることが判明していますから、現実には、大半の日本人が前述の仮定よりもさらに厳しい状況にあると容易に想像できます。
話を不動産市場に戻すと、国民全体の大部分をこのような人たち(年収500万円未満)が占める中、1億円を遥かに超える『億ション』の売買が活発であることにリアリティを感じられるでしょうか。
それら(取引価格1億円超の物件)は一般国民を対象したものではなく、国内居住の富裕層の一部と、海外の富裕層・投資家のために作られて供給されていると言えます。
これは、話題にしてきた『不動産』という特定の市場に限った話ではありませんよね。
昨今では、あらゆる業態で提供されるサービスに(極端な)格差が生じており、上位ランクのものほど、一部の日本人と多くの外国人に明確にターゲットを絞ってリリースされていると感じます。
お金を持っていない大半の日本人は、完全にスルーされてしまっているということですね。
覇権国・米国に大きく水を開けられるものの、確かに、日本は未だに経済大国と言えます。
しかし、日本人が豊かであることをそのまま意味していないのは、とても皮肉なことです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太