今日のテーマは、『国税庁の後出しジャンケンにより、日本のスタートアップは衰退する』です。
約1ヶ月前、
5月末に、スタートアップ企業(新興企業)にとっては、
文字通り『死活問題』となる事案が突如顕在化しました。
それは、
国税庁が『信託型ストック・オプション』の課税を巡り、
後出しジャンケン的手法で課税強化を表明したことです。
恐らく、一般にご存知ない方も多くいらっしゃいますね。
そこで、基本も含めて情報を整理しながら進めましょう。
先ず、
ストックオプションとは将来の上場や事業拡大を視野に、
権利行使価格(事前に決定された価格)で、従業員等に、
株式を取得できる権利を付与する、株式報酬の1つです。
一般的に、
創業から間もない・スタートアップ企業(新興企業)は、
ネームバリューのある大企業に比べて、資金力が乏しい。
当然、
従業員に支払うことのできる報酬(給与)も少なくなり、
これでは、『優秀な人材』の確保に苦戦を強いられます。
そこで、
目標達成した際の、将来的な利益を確約する手段として、
1990年代の米国で生まれ、日本国内も拡大しました。
もしも、
万事順調に進み、株式上場・事業拡大を果たした際には、
取得株式の売却により、大きな利益を得る可能性がある。
この方法では、
会社(企業)の業績向上が、個人の利益とも相関する故、
従業員のモチベーションアップにも繋がると言われます。
更に、
従来型ストックオプションのデメリットを解消する形で、
『信託型』が弁護士と大手コンサルにより考案されます。
改良版(信託型)では、
先ず、オーナー(創業者)が自己資金でSOを直発行して、
その全てを信託会社等に預け入れておくことがスタート。
その後、
対象となる従業員等に、業績に対する貢献度をみた上で、
後から、付与する株式数を決定できるようにする仕組み。
当初、
考案者、導入企業が想定した課税区分は『譲渡所得』で、
株式売却により得られた利益に対して『約20%』課税。
しかし、
国税庁は、税率約55%の『給与所得』との認識を示し、
行使済みのものに対しても、企業の遡及責任を求めます。
2023年現在、
導入済みのスタートアップ企業は国内『約800社』で、
そのうちの『約100社』が既に上場を果たしています。
つまり、
現時点でも、権利を行使した人間は一定数存在しており、
退職者からの企業の再徴収は、全く現実的でありません。
当然の如く、
一連の報道を受けて、信託型ストックオプション制度を、
導入しているスタートアップ企業の株価は、軒並み下落。
一方で、
今回の『ストックオプション』を巡る課税強化について、
国税は『従前から給与所得の認識』と批判を往なします。
試算では、
課税される税率の変更(約20%から約55%)により、
導入企業が新たに抱える税負担は『約200億円』規模。
確かに、
導入企業が激増する前に先手を打つ意味も含まれますが、
国全体として、この規模の税収アップは意味を持たない。
リスク・ベネフィットが、全く釣り合っていないのです。
岸田政権は、
スタートアップ新興を重要施策としますが、完全に逆行、
『金の卵』を生む鶏が、再び、殺されようとしています。
*海外・国内出張が続く為、暫く配信をストップします。
次回のブログ更新は『7月5日』以降になる予定です。
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2023年1月より【セミリタイア期間】に入っており、
今後の【資産形成セミナー】の開催は、完全に未定です。
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