今日のテーマは、『投資用マンション節税を封じることで、日本国民の税の公平感は高まるのか』です。
年末の風物詩のようなものですが、例年、師走に突入したこの時期は次年度の税制改革に関する議論も活発化します。
今回、個人的に特に興味を引かれたのは、投資用不動産(マンション・オフィス等)の相続について長年放置されてきた(?)節税方法を、政府・与党がついに封じる方向で動き出したことです。
基本情報から整理すると、相続が発生した時、不動産は現行のルールでは購入価格(から減価償却分を差し引いたもの)ではなく、相続税路線価を基準として評価額が算出されることになります。
このルールに着目して、富裕層は保有資産の(相続発生時の)評価額を意図的に引き下げるため、人生の晩年に不動産を購入するという動きが以前から常態化していました。
仮に、1億円を現金として保有して相続が発生した場合、当然ながらそれは『1億円』として評価されてしまいますが、この方法(不動産取得)を用いれば、極論、資産を半分ほどに圧縮することも可能です。
経験のある方々は分かると思いますが、相続税はその発生時から一定期間内にキャッシュ(現金)で納めることが原則とされており、数ある税金の中でもトップクラスの強制力を持っています。
それ故、数千万円から数億円の評価額を圧縮する(減らす)という対策をとることは、該当者にとって非常に有効に機能することになるのです。
今回、高市政権がターゲットとするのは、自分以外の第三者に貸すことを目的に購入したマンション・オフィス等の投資用不動産で、相続税を算定する際の物件の評価方法を改めようとしています。
前述の通り、現行ルールでは該当物件の評価額は相続税路線価を基準としていますが、相続直前に購入されたものの場合、今後は購入時の価格に基いて評価される方法に変更される見通しです。
ちなみに、相続直前と言っても、本当の『駆け込み購入』だけが対象になる訳ではなく、相続発生時から遡り、5年以内に購入されたものをターゲットとして調整されるというのが現在の見方。
また、今回の件が正式に決定されれば、少しのタイムラグを置いてゆくゆくは『居住用不動産』にまで適用が拡大されるであろうことは目に見えています。
元々、お金持ちも3代でゼロに戻ると揶揄されるほど厳しい日本の相続税法ですが、数年前には控除額も大きく引き下げられて(3000万円+600万円*法定相続人数)一段と締め付けられています。
ただし、慢性的な財政難に陥っている日本国においては、恐らく、この分野に限らずこれからも更なる国民負担が求められることになるでしょう。
何故か、いつの世も悪者扱いされてしまいがちな富裕層(お金持ち)ですが、今回の税制改革により、日本国民全体の『税の公平感』は高まりを見せるのでしょうか。
一つの扉が閉じれば、ほかの扉が開くことは世の中の常。
投資用不動産節税という一つのトレンドは終焉しそうですが、来年以降はそれとは異なる流行が生まれることになります。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太





