今日のテーマは、『全銀協が決定した革命により、日本のアングラ・マネーの大移動が始まる』です。
昨日6月19日、全銀協(全国銀行協会)は加盟銀行向けの指針を見直して、今後、貸金庫での現金保管ができないようにする旨を発表しました。
今年に入り、国内最大手の三菱UFJ銀行・みずほ銀行で、担当行員による『現金窃盗事件』が相次いで明るみに出たことは記憶に新しいですよね。
前者(三菱UFJ)では、40代半ばの女性行員が自らが勤務する東京都内の2支店において、4年半ほどの間に現金10億円・金塊7億円を盗み出していたと言います。
これらは交遊費やギャンブルに注ぎ込まれていたほか、投資の信用取引で開けた穴(損失)に補填されていたようですが、生涯年収の約4倍に相当する窃盗額ですから完済する可能性はありません。
また、後者(みずほ)は30代半ばの女性行員が、こちらも東京都内の勤務する支店でスペアキーを用いて、顧客2人の貸金庫から3年半で約6600万円を盗み出していたというもの。
先ほどの金額(約17億円)と比べると、感覚が麻痺して可愛いと思ってしまうところが怖いですね。
恐らく、これら2件の窃盗事件は『氷山の一角中の一角』で、全国津々浦々にある地方銀行・信用金庫まで含めれば、担当行員により莫大な金額の顧客資産が『窃盗』されていると容易に想像できます。
顧客としては、自らの資産を守るために貸金庫を利用していたはずが、預け入れた先が『泥棒のアジト』だったとは大きな皮肉です。
これらの事件を受けて、全銀協(全国銀行協会)は冒頭に紹介した改革を発表した訳ですが、このルール改定により今後は大きな潮流の変化が生み出されると想像しています。
もちろん、今回の改革は『顧客の資産を守るため』のものですが、それにより、実際には被害を受けていない99%(?)の顧客は反対に苦境に立たされることになるのです。
何故なら、話題に挙がっている『貸金庫に預けられた現金』とは、口座に入金することで『預金残高』として表に出したくない性質を持つものも多く含まれているだろうから。
日本銀行調査統計局の調べによると、2025年現在、日本人が保有する個人金融資産の総額は『2000兆円』の大台を軽く突破しています。
また、その過半に相当する『1000兆円超』が現金保有されていると予想されており、そのうちの無視できない規模(割合)が貸金庫に置かれていると考えても不思議ではありません。
因みに、新紙幣の流通がスタートした昨年(2024年)7月の時点で、最も秘匿性の高いタンス預金には『100兆円超』の現金が眠っていると日本政府は予測していました。
秘匿性の観点で貸金庫はその次点に位置していますが、そこに存在する現金の規模は前者(タンス預金)と同等か、もしかするとこちらの方が大きくなる可能性すら秘めています。
近い将来、貸金庫での現金保管が出来なくなれば、必然、それらは表出することになります。
意図せずして、アンダーグラウンド・マネーの大移動が突如スタートすることになりました。
メディア的にはフォーカスし難い話題ですが、その向かう先がどこになるか注目しています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太