今日のテーマは、『日本が抱えている年金問題に、果たして最適解は存在し得るのか』です。
一般的に、
資産形成(投資)を実行する目的を質問されたとしたら、
大多数の方々がリタイアメント・インカムの構築、即ち、
退職後に必要な老後資金の準備と回答すると想像します。
確かに、
世の中には、保有資産の運用益が生活コストを上まわり、
人生の半ばで経済的自由を実現する人たちもいますよね。
ただし、
それ(経済的自由人)が全体に占める率は0.01%程で、
裏を返せば、ほぼ100%の方々には縁のない世界です。
しかし、
時期は違えど、退職する時は誰しも共通に訪れますから、
その後の生活を支える年金原資は全員共通に必要不可欠。
もちろん、
公的年金で悠々自適な生活が送れればそれも不要ですが、
日本国の現状とこれから待ち受ける未来を想像したとき、
それが実現できると考えている人など皆無だと考えます。
元々、
現行の年金制度の基礎が作られたのは大戦後の動乱期で、
時代の変化に伴う微調整はほぼ毎年行われているものの、
ベース(軸)は大きく変わってないというのが実情です。
その間、
日本国民を取り巻いている環境は劇的に変化してしまい、
20世紀と比較して私たちが生活するのは全くの別世界。
当初、
『100年安心プラン』と持て囃された年金システムは、
その言葉通り、制度として寿命を終えようとしています。
仮に、
これからも年金システムを維持・存続させるのであれば、
入(保険料収入)を増やし出(給付)を減らすしかない。
しかし、
すべての物事に共通して、理屈の上で上手くいくことが、
現実の世界でそのまま機能するほど甘い話はありません。
今の日本は、
先日も触れた通り、年金制度を改革する為のアクセルと、
変化の痛みを軽減するためのブレーキを同時に踏む状態。
存在するか否かも含めて、『最適解』を模索しています。
昨日29日、
厚生労働省は、パート勤務の短時間労働者が加入する際、
求められる厚生年金の企業規模要件の撤廃時期について、
当初の予定から6年延期する方針であると発表しました。
今後は、
企業規模要件を2027年から段階的に引き下げていき、
2035年10月には完全撤廃できるよう働き掛けます。
今回、
加入条件緩和の延期が提案された理由は、実行に移せば、
中小企業の保険料負担を懸念する声が相次いて出たため。
一般的に、
厚生年金加入者は高い保険料負担がイメージされますが、
労使折半の仕組み故、雇用する企業にも重荷になります。
日本政府としては、
年金保険料を増やしたいのは山々ですが、強行策に出て、
倒産する企業を増やしてしまっては本末転倒と言えます。
ひとつの面ばかりフォーカスして、そちらを優先すれば、
他方が綻び、その補填を続けていけば全体が大きく歪む。
恐らく、
解決法のない、究極の難題に長年取り組みつづける中で、
日本政府はリセットの衝動に駆られていることでしょう。
私たちが直面する年金問題は、最適解が存在していない。
老後資産は、自助努力により構築していく他ありません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太