今日のテーマは、『異次元の速度で進む少子化が解決しない、日本社会が抱える本質的課題』です。
今からちょうど1ヶ月ほど前、厚生労働省より公表された人口動態統計月報年計により、昨年(2024年)の出生数が68万6061人で正式確定したことが判明しました。
当初の予測を約10年間も前倒しする形で『年間出生70万人割れ』が起きたことは、私たち日本人に衝撃を与えましたよね。
因みに、この数字は統計を開始した1899年(明治32年)以降で過去最小となるもの。
当時、日本の総人口は約4300万人と現在の3分の1ほどの水準だったことを考慮すると、その数字(年間出生68万人)が意味するところの深刻さが分かると思います。
また、出産年齢別の出生数において、20代前半(20ー24歳:4万2754人)のそれを40代前半(40ー44歳:4万3463人)が上回るようになったことも注目を集めています。
この変化は、社会全体の晩婚化により40代の出生数が飛躍的に上昇したという話ではなく、シンプルに20代前半の年齢層の出生数が減少していったことにより起きた逆転現象です。
お隣・韓国では、合計特殊出生率(一人の女性が生涯で出産する子どもの平均数)が0.75と回帰不能点を大きく超えていますが、最大の理由は20代の出生数が壊滅したことだと言われています。
幸いにも(?)日本のそれは1.15と幾分マシな数字ですが、このまま何も対策を講じなければ、少しの時間の経過とともに韓国を追随することになるのは明らかだと考えます。
それでは、話題に挙がる20代前半の女性の結婚・出産を奨励すれば万事解決するかと言えば、物ごとはそれほど単純な話ではありません。
恐らく、皆さんも感じられていると思いますが、現代の日本においてこの年齢層(20ー24歳)の出生数を大きく増加させることがそもそも困難だからです。
何故なら、全体の平均年収が420万円ほどに低迷する現代日本において、昭和時代のように世帯主(主に男性)のシングル・インカムだけで経済的に成立する家庭は皆無・若しくは極めて少数派だから。
つまり、現代日本はダブル・インカム(夫婦共働き)がデフォルト設定にあり、4年制大学を卒業した女性が24歳までに『出産』というイベントを迎えることは現実問題として不可能なのです。
もちろん、大学に進学せず高卒で働き始めたり、世帯主のみのシングル・インカム戦略でいくことを決断すれば理屈的には可能ですが、経済的な観点で劣勢を強いられることは避けられません。
奇しくも、先日、某・ファストフード店で隣り合わせた20代前半の女性たちが話していたテーマが、経済的に余裕がないため『出産』はおろか『結婚』すらイメージ出来ないというものでした。
第二次世界大戦の敗戦直後のように『産めよ・増やせよ』の大号令だけでは解決できない。
日本社会が直面する『少子化問題』の本質的課題は、想像以上に根深い所にありそうです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太