今日のテーマは、『金利ある世界が戻りつつある今、日本に密かに忍び寄る国債リスクとは』です。
先日の公式ブログでは『金利ある世界が戻りつつある今、果たして国債は有益な選択肢になり得るか』と題して、足元で利回りが1%を超え始めた個人向け国債が注目を集めていることを紹介しました。
確かに、サブプライム危機以降、10年を超えてゼロ金利に慣れてしまった日本人にとって、たかだか『年率1%』の金利だったとしてもそれは驚異的なものとして映りますよね。
まして、日本人が大好きな同類(元本保証)の預金金利(スーパー定期・大口定期を含む)が0.50%未満に留まる今、一般的な方々がそれに魅力を感じてしまうのは無理もないかも知れません。
もちろん、それ(個人向け国債)だけで国家財政が健全化されるほど大量な買い支えがあるとは思いませんが、数千万規模の対象者(日本国民)から注目を集めることは国家として間違いなく朗報です。
しかし、国債という同じテーマで考えた時、その恩恵を遥かに凌ぐリスクに晒されつつあることに気付いているでしょうか。
ここで言うリスクとは、2025年に入ってから顕著に、生命保険各社が年限10年を超える超長期債の購入を控えるようになって来ているということ。
先日示した個人向け国債(最長10年)とは異なり、日本政府は、主に金融機関や年金基金等の機関投資家をターゲットとして超長期債(償還まで20年、30年、40年etc.)を発行しています。
特に、生命保険各社は安定財源を確保するという意味でこれまで大量に購入して来た歴史がありますが、日本国内に『金利』が復活してきたことにより超長期債を取り巻く環境も一変。
ご存知の通り、債券における金利と価格は逆相関の関係にありますが、金利が上昇し始めたことで、生保各社が大量に保有する超長期債も価格が下落し、大きな評価損を抱えるようになってしまっています。
また、生保会社の財政の健全性を測る指標の一つにソルベージ・マージン比率なるものがありますが、2025年度末の決算から算出法に若干の改訂があり、国債保有のメリットが減少してしまったのです。
現在、超長期債の利回りは上昇し続けており(20年債:2.596%、30年債:2.80%、40年債:3.356%)、前述の通り、それに逆相関する形で取引価格は下落の一途を辿っています。
このような傾向も影響してか、生命保険各社は前年比として20ー30兆円規模も超長期債の保有残高を減らしており、年内はおろか来年以降もその傾向は継続すると見られているのです。
もちろん、超長期債の消化(購入)が滞ることで、日本が早々にデフォルト(債務不履行)に陥るなどと不安を煽るつもりはさらさらありません。
しかし、長期視点で好ましくない状況にあるのは事実であり、恐らく、内部では個人向け国債以上に対応が迫れていることは間違いないでしょう。
命名するならば『生保ショック』ですが、それがトリガー(引き金)となることで、日本全体の景気低迷に繋がらないことを切に願うばかりです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太