今日のテーマは、『2022年施行の【年金改正】は、国民に【メリット】をもたらすか??』です。
かなり遅い時間になってしまったので、少しだけ。
どれだけの方々が、理解されているか分かりませんが、
昨年(2020年)公的年金の改正法が成立しており、
その多くが、来年(2022年)度から施行されます。
今回、
まあまあドラスティックに制度改正が行われますが、
ここまで『大きな変化』は、2012年以来のこと。
もちろん、
日本政府としては、『メリット』を訴求しているのですが、
果たして、本当に、国民に『恩恵』があるのでしょうか??
変化は、諸々あるのですが、今日は2つに焦点を当てます。
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①『繰り下げ受給』する上限年齢引き上げ。
②『厚生年金加入者』の適用範囲拡大。
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この2フレーズを聞いて、即イメージできる方々は、
普段から、『年金制度』に関心を持たれていますね。
ただ、
50代後半の大半が『年金受給額』を把握しない日本では、
来年度以降の『年金改正』も、理解していない方々が大半。
正直、洒落にならない状況だと思うので、
今日は、簡単にご紹介したいと考えます。
先ずは、『前者』から。
現時点、『65歳』を受給開始年齢と定める年金制度ですが、
現行制度でも『繰上げ・繰り下げ』受給は認められています。
具体的には、
『繰上げ』受給は、1ヶ月につき『0.5%』ずつが減額され、
最大『60歳』まで受給を早めると『30%』が減収します。
(*来年度改正以降は、最大減額は24%に軽減されます。)
反対に、
『繰下げ』受給は、1ヶ月につき『0.7%』ずつが増額され、
最大『70歳』まで受給を遅らせると『42%』の増収です。
確かに、
『70歳』まで繰り下げて、無事、年金受給開始することで、
年金収入が『約1.5倍』になることは魅力的に映りますよね。
これが、
来年度以降の改正では、最大『75歳』まで繰下げ可能となり、
最大の増額幅は、前述から倍増の『84%』に跳ね上がります。
先ほど、
『繰下げ』1ヶ月あたり『0.7%』の増額とお伝えしましたが、
これは、年間換算で『8.4%』に相当するハイ・リターンです。
もしも、
このオファーが『40代』までに届けば、喜んで応じるでしょうが、
残念ながら、公的年金におけるオファーは『65歳』時に届きます。
勿論、
この『賭け』に勝てば、私たちは『恩恵』を享受できますが、
その対価として賭ける『寿命』は、誰にも把握が出来ません。
その結果、
資産形成(投資)的観点では、有利過ぎるこのオファーも、
現行制度ですら、利用する国民は全体の『1%程度』です。
当然といえば、当然ですね。
もしも、私が、現時点で『受給年齢』に達していても、
余程の理由がない限り、『繰り下げ受給』はしません。
何故なら、
この改正の背景にあるのは、『原資枯渇』という根本的な問題で、
繰下げ受給者が増大する(?)ことで、先送りする事だからです。
いずれ、近い将来、必ず『破綻する制度』です。
貰えるうちに、貰っておく選択が『賢明』です。
『後者』についても、方向性は同様です。
『国民年金』と比較して、『厚生年金』は充実した制度ですが、
これも『設計通り、上手く機能すれば』の前提で成り立ちます。
現在、『厚生年金』の加入者要件は、
週労働時間『20時間』以上、月額賃金『8.8万円』以上ですが、
もう1つ、『従業員500人超の企業』という条件が付されます。
これが、
来年度以降は、段階的に『企業規模』が緩和されることになり、
2024年度以降、新たに『65万人』が加入可能となります。
このように表現すれば、『良いこと』のように映りますね(笑)
しかし、
文章の読み方を変えれば、『加入者要件』を緩和することは、
条件を満たした方々は、『(ほぼ)強制加入』を意味します。
私自身、
もしも、選択可能なのであれば『国民年金制度』すら、
即座に『脱退』させて頂きたいと考えるシステムです。
ただ、
『国家運営のねずみ講』と理解しながら、保険料納付するのは、
この制度を無視したら、保有資産の『強制徴収』を受けるから。
これが、
企業・従業員とも、負担の大きな『厚生年金』に波及する事は、
果たして、本当に、国民に『メリット』あるのでしょうか??
要は、
『加入者要件』を緩和する事で、『厚生年金』の加入者を増やし、
徴収する『年金保険料』を増大させることが『本当の目的』です。
総合すると、
来年度以降、順次、施行される『年金改革』の全体像は、
支出(年金支給)を減らし、収入(保険料)を上げる事。
(*上記、国家サイドからの視点で記述しています。)
これは、
『年金財政』が火の車であることを、端的に表していると感じます。
この状況で、
『公的年金制度』を視野に入れた『ライフ・プランニング』が、
どれだけ『リスク』を孕むか、理解して頂けたでしょうか??
冒頭の言葉を覆し、案の定、長くなってしまいましたが(笑)、
皆さんに、少しでも、『健全な危機感』が伝われば幸いです。
井上耕太事務所
代表 井上耕太