今日のテーマは、『なぜ、日本の国家財政は借金体質から抜け出すことが出来ないのか』です。
日本の国家財政が危機的状況にあると叫ばれて久しく経ちます。
実際、一般会計は歳入(税収+その他の収入)が約80兆円に対して、一方の歳出は(年度半ばで追加される補正予算まで含めると)120兆円を軽く超える数字になります。
つまり、そのギャップ(歳出ー歳入)に相当する年間40兆円規模を、毎年新たに借金(国債発行)することで運営されているということ。
その結果、サブプライム危機にあった2008年当時は500兆円ほどだった累積債務が、十数年の時を経た2025年現在では1000兆円オーバーとそれほど長くない期間で倍増してしまいました。
この状況について、MMT(現代貨幣理論)信者をはじめ、著名経済学者の中にも『問題ない』発言を繰り返している人たちがいますね。
自国通貨の発行権を有する政府は借金を積み上げても破綻することなく、仮に既発債が償還期限を迎えても、新発国債を充当することで無限ファイナンスが可能になるのだと言います。
それを、『経済学の常識』や『ファイナンスの基本』等と発言している場面も目にしますが、その言葉で片付けてしまおうとするスタンスに大きなリスク(この場合は危険性)を感じています。
皆さんご存知の通り、自信満々の専門家の言葉・予測ほど当たらないものも世界にありませんから。
確かに、国家にとって『無借金経営』が理想とは言いませんが、コントロール能力を失い、借金(国債発行額)が無尽蔵に増殖している現代日本は間違いなく危機に瀕していると感じています。
先ほど、借金を積み上げることを『問題ない』とする方々を紹介しましたが、この考え方と真逆のスタンスを取るのは20世紀の日本が誇る経営の神様・松下幸之助さん(現・パナソニック創業者)です。
1970年代に開催された講演会では、国家運営に関する次のような理想を掲げています。
『例えば国家予算の1割を積み立てていくとして、100年間続ければ積立金の利子(運用益)だけで国家予算は賄えるようになる。よって、税金は要らなくなる。』
事実、前半部分(予算の1割積立*100年間)を実現したとして、その原資を年率4%運用すれば、インフレ・物価上昇率等を考慮しても十分に国家運営が出来るようになるのです。
しかし、それ(松下幸之助さんの講演)から半世紀の時を経て、この時掲げられた無税国家構想が実現に近付いているかと言えば、完全に逆走してしまっているというのが実情です。
もし仮に、松下幸之助さんが生きていたとしたら、気を失ってしまうかも知れませんね。
なぜ、日本の政治家・官僚たちはここまで国家運営(経営)が下手くそなのでしょうか。
その理由は大きく2つあって、一つは彼ら・彼女らはペーパーテストは優秀でも、実技(経営)の観点ではまったく経験のないずぶの素人たちだから。
もう一つは、あくまで『他人(日本国民)のお金』を扱うという立場のため、自らのお金を扱う場合とは異なり著しく真剣さが欠如しているからです。
メディアでも度々報じられていますが、民間企業やちょっとした規模の組織でも、運転資金や積立金を横領したという報道は後を断たないですよね。
それが国家的規模ともなれば、お金(税金)を扱うサイドの責任感が薄れるのは尚更です。
日本国が無税国家になる空想はおろか、今後も財政状況が改善することはほぼ有り得ない。
私たち日本国民は、自助努力により自らの経済基盤を強固なものにする以外選択肢はなさそうです。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太