今日のテーマは、『FRBの利下げ公表も不変の為替相場、日本の描いたシナリオが崩れつつある』です。

 

 

一週間ほど前の話になりますが、FRBは日本の金融政策決定会合に相当するFOMCを開催して、米国の政策金利を0.25%引き下げることを決定・公表しました。

 

 

同国の利下げは昨年12月に開催されたFOMC以来6会合ぶりのことであり、当然ながら、2025年に入ってからは初めてのこと。

 

 

これにより、政策金利は年率4.00ー4.25%のレンジでコントロールされることになり、直近で最も高かった地点(5.25ー5.50%)からの比較で累計1.25%引き下げられたことになります。

 

 

加えて、米国内の雇用情勢も減速傾向が明らかになり始めたことを受けて、年内残り2回のFOMCでも、少なくともトータル0.50%の政策金利を引き下げる方針であると明言しています。

 

 

米・FRBが利下げを再始動させるというこの報道は、株式市場では好意的に受け取られており、社会のお金の循環速度がアップすることへの期待感から、相場全体がもう一段上昇するとの見方が優勢です。

 

 

個人的には、想定よりも時期的に早く・急激にパーティーが始まってしまったことを憂慮していますが、一般的には大半の参加者(投資家)の含み益が増大するため高揚感が得られる時期が続きます。

 

 

ただし、物ごとにはメリットがあればデメリットも共存するのが世の常で、為替相場については、日本が当初に描いたシナリオとの乖離が日に日に大きく・明らかになっています。

 

 

現在、仲値ベースでドル円相場は1米ドル=148円付近で推移していますが、冒頭でご紹介したFRBからの利下げ公表を受けても、その前後で為替水準はほとんど変動していません。

 

 

これは、残2回で0.50%の利下げを実行することも含めて市場が想定していて、先週のFOMC以前から、それらのシナリオを完全に組み込んで為替レートが成立していたことを意味しています。

 

 

しかし、金融・経済に明るい方々は理解されると思いますが、現在起こっていることは、日本が当初描いていた為替相場に関するシナリオとまったく辻褄が合っていません。

 

 

少しだけ振り返ると、コロナ禍の真っ只中だった2020年、ドル円相場は1米ドル=100円台で推移しており、わずか5年ほどの間に想定外の円安が進行・常態化したことに気付かされます。

 

 

特に、為替のグラフを確認すると2022年以降に急激に日本円が安くなっていることが分かりますが、その主因は日米の金利差が拡大していることにあると盛んに叫ばれていました。

 

 

しかし、時期・速度ともに想定より遅れはしたものの米国が利下げに舵を切った今、日本の利上げ傾向も相まり、円安の主因とされた『日米金利差』は明らかに縮小傾向にあります。

 

 

にも関わらず、日本円が下落水準(?)のままであることは、コロナ禍の動乱を経て、シンプルに『日本円』という通貨の価値が失われたことを意味するのではないでしょうか。

 

 

確かに、専門家の中には、米ドル・円の為替水準の理論値を用いて『今の日本円は低く評価され過ぎている!』と叫ぶ人もいますが、現実世界に表出しなければ、すべては机上の空論で終わります。

 

 

長年愛読いただいたコア読者の皆さんは、10年以上前から、資産形成における『通貨分散の重要性』について繰り返し述べてきたことを記憶に留めて頂いていると思います。

 

 

それを現実の問題として突き付けられる時が、今、日本人の目の前に来ているのです。

 

 

井上耕太事務所(独立系FP事務所)

代表 井上耕太

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井上 耕太

・独立系FP事務所【井上耕太事務所】代表。
・1984年4月21日生まれ。岡山県津山市出身。
・2008年 国立大学法人【神戸大学】卒業。

【保有資格】
・CFP®(国際ライセンス:認可番号 J-90244311)
・1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格:認可番号 第F11421005598号)

【活動実績】
・個人面談【人生を変えるお金のセッション】受講者は400組を超えており(*2022年4月時点)、活動拠点・大阪のみならず、全国から面談依頼が舞い込む。

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