今日のテーマは、『マーケットの乱高下に翻弄されぬよう、ポーズ(フェイク)を見抜く方法』です。
慢性的に火種が燻り続けている中東地域で、イスラエルーイランの両国間に表立った攻撃の応酬がスタートしたのは先週末のことです。
もちろん、この動きに不安を覚えたマーケットは敏感に反応して、米国市場の代表指数・NYダウ平均株価は一時1000米ドル近くの下落を記録しました。
もしかしたら意外に思われるかも知れませんが、元々、両国(イスラエルーイラン)は長きに渡り対立関係にあり、水面下では戦火を交えつづけてきました。
何のことを言っているか、分かるでしょうか?
ご存知の通り、中東地域はユダヤ人(イスラエル)とアラブ人(イスラム)の対立関係が根強くあり、イスラエルと敵対する非政府イスラム組織・ハマース、ヒズボラ、フーシー等はイランが支援していました。
冷静に考えれば当然の話で、世界最強の呼び声高いイスラエル軍を相手に、何の後ろ盾もなく非政府組織が戦い続けられるはずがありません。
つまり、イランはこれらを使い代理戦争を仕掛けていた訳ですが、直接対決となると物事が大きくなり過ぎてしまうため、両者ともにそれだけは避けてきたという背景があります。
この辺りの立ち回りの方法は、世界各国のマフィアとも通じるものがありそうですね。
また、イランはもともと中国・ロシア、北朝鮮等の反米グループに所属していましたが、第二次トランプ政権がスタートして以来は歩み寄り、態度が大きく軟化しています。
ただし、米国に対して唯一不満をもっていたとすれば核保有をオフィシャルに認められないことで、この点については、中・露・北朝鮮との協力関係を強める姿勢を示して牽制し続けてきました。
ここまで簡単に振り返ってきましたが、最低限でも、各国間にこのような背景があることは理解した上で今回の動き(イスラエルーイラン間の攻撃の応酬)を見ていく必要があります。
そうすると、米国の仲介のもと両者が停戦合意したことも既定路線であり、この戦いが最初から長期化する見通しはなかったことが分かるのではないでしょうか。
何故なら、もしも両者が真正面から衝突すれば前述のとおり大惨事になり、他の誰でもない当事者(イスラエル、イラン)たちに甚大な被害・経済的ロスが生まれてしまうから。
誤解を恐れず言えば、倫理的観点ではもちろんのこと、2025年の現代社会において『戦争』とは結果の如何に関わらず何もメリットがない行為だということが判明しています。
仮に勝利したとしても、コンプライアンス意識が高まった現代では戦勝国が莫大な利益を得られる訳でもなく、反対にヒト(国民)・モノ(物資)・カネを失うことだけは確定しているから。
むしろ、新時代の価値観が広く浸透している今では、例え戦況を優位に進めていたとしても自国民からの批判が高まる可能性も十分にあり、いよいよ『メリット』が見当たらなくなるのです。
つまり、今回の攻防は双方が自らの主張を通したいがためのものであり、最初からポーズ(フェイク)だったと解釈するほうが妥当です。
そのような本質を理解することなく、物ごとを表面的にばかり捉えていては、投資家としてもマーケットの動向に翻弄されて右往左往してしまいます。
実際、米国が登場して両国が停戦合意する可能性が高まったと見られるや否や、株式市場は急速に上昇し、NYダウ平均株価は終値として約4ヶ月ぶりに4万3000ドル台を回復しました。
直結する投資(金融・経済)の分野だけに限らず、歴史や政治、哲学の継続的な勉強は不可欠。
『ローマは一日にして成らず』の格言は有名ですが、投資の世界も決して例外ではありません。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太