今日のテーマは、『金融機関を盲信することなく、お金持ちがタンス預金をする一つの理由』です。
先日も少しだけ触れましたが、日銀調査統計局の推計によると日本の家計金融資産は約2200兆円に達しており、平成以降の失われた30年間を通しても倍増しています。
資産総額として米国に大きく水を開けられているのは事実ですが、それでも、世界トップクラスのお金持ち国家(国民)であることは間違いありません。
これは、経済的自由を目標に資産形成(投資)をスタートした時から感じていたことですが、現代の日本に生まれることが出来た時点で私たちは途轍もなく大きなアドバンテージを得ています。
何故なら、資産形成(投資)とはその日のお金に心配のない人たちだけが与えられた特権(娯楽?)であり、少なく見積もっても、世界の過半数の人たちはその権利すら与えられていないから。
先ずは(国家財政は壊滅的ですが)この時代・この国に生まれたことに感謝しても良いかも知れません。
話を戻すと、日銀の調査で約2200兆円と見積もられている家計金融資産のうち、少なくとも100兆円を超える金額が『タンス預金』されていると試算されています。
実際、お金持ち(主に経営者・医師等)ほど自宅や会社に頑丈な金庫を保有していて、金融機関に預けることなく、自らのセキュリティ管理のもと資金を手元に置いている人も多く存在します。
中には、表に出せない性質のお金を保有しているケースもあるでしょうが、大部分がそうかと言えば決してそうではありません。
果たして、彼ら・彼女らがそのような行動(タンス預金)をとる理由はどこにあるのでしょうか。
先日、メディアを賑わせたある報道が、そのヒント(回答?)の一つだと言えるかも知れません。
その報道とは、三菱UFJ銀行に出向していた日本生命保険の社員が、銀行の内部資料を不正に持ち出して、保険の営業活動に利用(転用)していたというものです。
この問題を受けて、日本生命保険は金融庁から保険業法に基づく報告徴求命令を求められ『実態解明に全力を尽くし、再発防止の策定及び徹底に努める』とコメントしていますが、これは真っ赤な嘘。
何故なら、持ち出された(UFJ銀行の)内部資料は保険の販売戦略等が記されており、日本生命保険からUFJ銀行への『逆流禁止』という印を押して社内で共有されていた事実があるからです。
また、出向社員は当該資料を持ち出した際、担当部署(金融法人部)の管理職に送っていたこともその後の調査で明らかになっていますよね。
つまり、今回の事例は一社員の独断により実行されたものでは決してなく、完全に組織ぐるみで上(会社上層部)からの指示のもと行われた会社としての不正行為(犯罪行為?)だと言えるのです。
そして、今回の件は(日本生命側から見ると)運わるく明るみに出ただけで、恐らくは今までも日常的に行われてきたことの氷山の一角中の一角。
もちろん、金融インフラが高度に発達した現代社会において、金融機関の口座保有・預金・金融商品の契約を完全にゼロにすることは不可能だということは理解しています。
しかし、彼ら(銀行・保険・証券等)を盲信していては、私たち消費者サイドも痛い目を見ることになる。
今回の報道はそのような『当たり前のこと』を改めて認識させてくれる良い機会になったと考えています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太