今日のテーマは、『3日間の停戦を発表したロシアに見え隠れする、プーチン大統領の焦り』です。
先月28日、ロシア大統領府はプーチン大統領の判断により、5月8日午前0時からの72時間、3年超に渡り戦争を続けてきたウクライナとの間の戦闘を停止すると発表しました。
中日(なかび)の5月9日は旧ソ連時代の対ドイツ戦勝80年記念日にあたり、中国・習近平国家主席を始めとした友好国の首脳を招いて軍事パレードが開催される予定です。
このイベントに対しては国際社会からの批判を浴びる可能性も示唆されますが、同時期に対ウクライナの停戦を実行することでそれを緩和する目的があると推測されています。
確かに、ウクライナ・某外相がSNSを通じて指摘している通り、ロシアが本気で和平交渉を望んでいるならば、即時停戦に持ち込まないことへの理由は見当たりません。
約束の期日(5月8日)にはまだ一週間ほど猶予がありますが、その間も絶えず戦場では人の血が流れているからです。
やはり、今回の停戦に『ポーズ』の部分が含まれるということは間違いなく事実だと考えます。
しかし、それが100%の真実とは言い切れず、ロシア・プーチン政権としては(自らに有利な条件で)恒久的な停戦に持ち込みたいという本音(焦り)も見え隠れしています。
もしかすると、多くの方々は認識を間違っているかも知れませんが、トランプ・米大統領もプーチン・露大統領も好戦的な性格から見境なく争いを仕掛けている訳ではありません。
戦争については、如何なる場合も人を殺してはいけないという倫理的問題もありますが、国家にとっても莫大なコスト(ヒト・モノ・カネ)が掛かるため、相当な戦果をあげない限りメリットは存在しないのです。
とは言うものの、ウクライナはソ連時代からロシアにとっての要所であり、過去100年に渡り戦いを繰り返してきた因縁もあります。
ロシアとしては、自国の被害を最小限に抑えて手に入れられるなら良いのですが、既に、死傷者数はウクライナと同等の50万人規模にまで膨れ上がっている。
自らが先に仕掛けたため、易々と手を引けない状態に陥っているロシアですが、戦況が長引くにつれて確実に国内の景気は悪くなり、国民の間にも不満感が漂い始めています。
もし仮に、このまま目立った戦果なく戦争がさらに長期化すれば、いかに独裁・プーチン政権と言えど、ロシア国民から嵐のような非難にさらされてしまうことになる。
元々、犬猿の仲にある欧州各国から協力を得られるかは微妙ですが、第三者である米国に仲介をしてもらうことで早期に恒久的な停戦を実現したいのが本音でしょう。
あわよくば、ウクライナ領土の一部でも併合が認められれば、国民に対する格好もつく。
倫理的な観点以外の理由からも、戦争を終結したいと考えるロシアが焦り始めています。
井上耕太事務所(独立系FP事務所)
代表 井上耕太